第190話 第三者Side
「純也か?」
携帯越しに聞こえてきたのは、紛れもない桂木優斗の声であった。
「優斗、連絡が付かなかったけど何をしていたんだ?」
「――え? 優斗から電話!?」
峯山純也の、優斗という名前に反応した神楽坂都はソファーから立ち上がると、峯山純也の方へと体を乗り出す。
「ちょっと! 落ち着け! 都!」
突然、近づいてきた神楽坂都に対して、峯山純也は、座っていたソファーから立ち上がると窓際へと移動する。
「二人とも無事か?」
「無事って……何を言っているんだよ? それよりか、お前、どこにいるんだよ? 護衛してくれているか知らないけど、俺や都に、お前の妹は部屋から出してもらえないんだよ」
「そうか……。それよりも――」
「そうかじゃない! それよりもじゃない! お前、いま、何をしているんだ?」
「そっちに向かっている。それよりも、3人とも無事なんだな?」
「そうだけど……、一体全体どうなっているんだ? お前は、無事なのか?」
矢継ぎ早に、桂木優斗に説明を求める純也であったが、それを遮るかのように、彼ら彼女らが泊まっているホテルが振動する。
その際に、ズシン! と、言う大きな音が響くと共に爆発音が部屋の扉の外から何度も発生する。
「――いまの音は何だ?」
携帯電話を介してまで聞こえる爆発音と振動音。
それを聞いたあと、明らかに電話を掛けてきている優斗の声色のトーンが下がる。
「わかんねえ」
「そうか。純也、頼みたいことある」
「頼みたいこと?」
優斗の声色が低くなり威圧感篭った声に、何か問題が起きているのでは? と、高清水旅館で魔物に襲われた峯山純也は、考えてしまっていた。
「すぐに、その部屋から出て市内でタクシーでも何でもいいから拾って西側へ逃げろ」
「どういうことだ?」
「だから、お前達を狙って襲撃者来るって言っているんだ」
「何を言っているんだ?」
「高清水旅館で魔物に襲われただろ? そいつらが、お前らを殺しにくるって言っているんだ。だから、すぐに部屋から出てホテルを出たあとは西側に逃げて時間を稼いでくれ」
「時間を稼ぐって何を……、そもそも、このホテルは警察が用意してくれたものだぞ? 警護だって警察が用意してくれているから、安全面だって完璧だと思うし、逃げる必要なんて――」
「俺を信じて都を守ってくれ」
「……つまり、警察だけだと俺達を守り切れないと言う事か?」
「ああ……。残念ながらな」
そこで、通路に繋がっている扉越しに銃声音が室内に反響する。
「純也……」
「分かったよ! 優斗、あとで説明しろよ! 都、すぐに胡桃ちゃんを連れてホテルを出て西側に移動しよう」
「――でも、外には警察の人が……」
「優斗が、警察だと守り切れない何かが近づいてきてるって電話で連絡してきたんだ。俺は、優斗を信じたいと思う。あれだけ切羽詰まった様子は初めてだった」
「……わかったわ」
すぐに峯山純也は、寝室に行くと意識を取り戻さない胡桃を背中に背負う。
そして、都と一緒に静かにホテルの通路へと出ると鳴り止まない銃声が扉越しでなくダイレクトに二人と、意識を取り戻さず寝ている桂木胡桃の鼓膜を揺さぶる。
「誰も俺達に気が付いてないみたいだ。移動しよう」
「そうね」
二人は静かに、階下を目指す。
途中にある貨物用のエレベーターに乗ったあとは1階まで降り、ホテルの裏口から出たあとは、タクシーに乗り爆発炎上を繰り返すホテルを後にした。
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