第121話

「どうでしょうかと言われても困るな」


 俺は腕を組みながら答える。

 

「それは、先に警察への就職を決めていると言う事でしょうか?」

「まぁ、就職は決めているというのもあるが、俺は基本的に静かに暮らしたいからな。あまり問題事に関わりたくないんだ」

「問題事にですか?」

「ああ」

「――ですが、奇跡の病院に関しては、こちらの方でも既に確認が取れております。あれを行ったのは桂木さんだと」

「確認が取れている?」

「はい。桂木さんは、膨大な霊力と神域を展開できるようですが、霊などの感知は不得意な御様子ですので、感づかれていないと思いますが、桂木さんの昨日の行動内容については、報告が上がってきています」

「それは……、警察庁の建物内部での出来事を含めてと言うことか?」

「はい。もちろんです」


 つまり、道場で俺が起したことについても把握していると言う事か……。

 まったくストーカーかよ。


「他人を勝手に詮索するのは良い趣味とは思えないな」

「桂木さんを住良木さんは心配していましたので――」

「傍付き様!?」

「本当のことでしょう? 住良木さん」

「それは……」

「神社庁は、職員の全てに対して撤収を命じたというのに、桂木さんを心配して住良木さんは、自身の守護霊を桂木さんの側に置いていたのです。何かあった時に、貴方を助けられるようにと。ただ――、それは杞憂に終わってしまったようですが……」

「はぁ―。つまり住良木は、山城綾子を俺が守っていた時からずっと守護霊を俺の近くに配置していたと言う事か?」

「……はい。申し訳ありません。ただ――」

「ただ?」

「裏山付近で、一時的に守護霊が貴方を見失っているのです。それ以降に、貴方を見つけた時には、山王総合病院で――」

「それは、もしかして俺に電話をしてきた時のことか?」


 コクリと頷く住良木。

 つまり、俺と根源神との戦いは見ていないということか……。


「なるほどな……」

「陰ながら見守るつもりでした。申し訳ありません」

「過ぎたことはいい。それよりも、今後は控えてくれ」

「分かっています。桂木殿が、相当な強さを秘めていることは、警察庁の道場で起こした問題を守護霊に聞いて確認していますので」

「そっか」


 つまり、警察庁での一連の行動は見られていたと。

 まったく……悪気が無かったとしても面倒だな。


「桂木さん」

「何だ? 東雲」


 俺と住良木との話が一段落したところで――、


「神社庁としては、かなりの力を有している貴方を必要としています。どうでしょうか?」

「悪いが、先約があるからな」

「桂木殿! 先約でしたら神社庁の方が先だと思うのですが……」

「そうでもないだろ。そもそも契約内容に関して具体的な話を持ってきたのは警察庁からだからな。だったら、先約は警察庁になると俺は思っている」

「……そうなのね」


 観念したような表情で小さく呟く東雲。


「理解してくれたならいい。ただ、どうしても何か仕事の依頼をしたいのなら、出来高制という事で、仕事を引き受けてもいいぞ?」





 

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