第106話
夕食を作り食べたあとは、お風呂タイム。
「優斗」
「何だよ」
「今から私、お風呂に入るよ?」
「早く入ってきてよ! 私が次に入るんだから!」
都がお風呂入るアピールをすると、すぐに妹が都の背中を押して脱衣所に押し込める。
「ゆうとー、おふろー」
「まったく、何で俺の名前を呼ぶのか……」
「お兄ちゃん! あれは、かまってちゃんアピールだからスルー推奨なの」
「そ、そうか……。時々、胡桃って都に対して辛辣だよな」
「いつも辛辣だけど?」
「そうは見えないが……」
「それはお兄ちゃんの目が腐っているだけだと思うの」
「兄に対しても辛辣だな!」
「私は、お兄ちゃんのことが好きだよ? 辛辣じゃないからね? 愛情表現だから」
ソファーに座っていた俺に甘えてくるように抱き付いてくる妹。
「はいはい。それよりも、明日は学校だろ? そういえば……、胡桃は勉強とか大丈夫なのか?」
「うん? 私は大丈夫なの!」
「そうか」
妹と会話していると、しばらくして都がお風呂から出てくる。
しかもバスタオル一枚、巻いただけの姿で――。
「胡桃ちゃん。お風呂空いたよー」
「むー、そんな恰好で何をしているのですか!」
「お風呂上りは、体が火照っているから、仕方ないのよね……」
「策士! 策士なのです! お兄ちゃん!」
「何だよ……」
「こっちにきてください!」
俺の腕を掴むと歩きだす妹。
仕方なく従うと妹の部屋に――、いまは俺が寝ている部屋に押し込められるとドアが閉まり外から施錠の音が聞こえてくる。
「おい! 何を施錠しているんだ! ――というか鍵なんていつの間につけたんだ?」
「お兄ちゃんのためなの。私がお風呂から出てきたら、開けてあげるからね!」
妹の気配が離れていくと共に「むーっ、胡桃ちゃん……」と、恨めしい声が聞こえてくる。
「優斗」
「何だよ……もう――」
「中からは開けられないの?」
「中からか……。ドアノブがないな……」
「――え? どういうことなの?」
「それは俺が知りたい難題だな」
しかもドアを軽く叩いた感じ、金属音がする。
つまり、俺が知らない間にドアも金属製に変えたということか? しかも御叮嚀に木目の色まで塗って――。
「優斗。私、思ったんだけど……」
「ん? 何か打開策とかか?」
「ううん。胡桃ちゃんは、優斗を監禁しようとしているんじゃないの?」
「おいおい。親しい中にも礼儀ありだぞ。俺の妹が実の兄を監禁するようなはずがない」
「そうかな……。だって――」
「まぁ、あれだ。大方、都が一つ屋根の下で暮らしているから、それに気遣っての事じゃないのか?」
「絶対違うから! どうみても、優斗を自分のモノにしようとしているのが伝わってくるから」
「まさか実の兄妹だぞ。アニメとかドラマの見過ぎだ」
「優斗は、鈍感だから分かってないのよ」
「おいおい。俺は、どんな状況においても生還できるほど、物事を観察する力には長けているほうだぞ」
「そういうことじゃないんだけど……。とりあえず、優斗は気を付けないと駄目だよ? だから、私の部屋で一緒に寝るとかどう?」
「――いや俺は一人で寝るから」
それに――、今日は夜中にSOGOに行く必要があるからな。
「もう、優斗って、もう少し、私の気持ちを理解してくれてもいいと思うのよね」
「きちんと理解しているぞ」
「全然、理解して無いとおもうけどね」
ドア越しで話していると、都が「服着てくるね」とドアの前から離れていった。
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