第65話

「おい、大丈夫か?」


 倒れている男達に声をかけていく。

 男達は、意識を失っていたが死ぬまでには至っていない。

 すぐに意識を取り戻す。


「これは、護衛対象の方にご迷惑をおかけしました」

「――いや、気にしないでくれ。俺も、コンビニに行くのに外に出たら、あんたらを見つけただけだから。とりあえず道路で寝るのは止めた方がいいと思うぞ?」

「いえ、自分らは何か得体の知れない幻覚を見せられたところまでは覚えているのですが……」


 そこまで素人の俺に話していいのか?

 それとも神社庁の中では俺の情報が何らかの形で共有されているのか?

 おそらくは後者だと思うが、俺の知らないところで物事が動くのは好ましいとは言えないな。

 だが、今は動く必要ない。

 何せ、俺の家の周囲で護衛をしてくれている連中は、逆を言えば俺を監視していることにも繋がるからな。

 倒れている全員を起こしたあとは、アリバイ作りの為にコンビニに行き買い物をしてから自宅に戻った。


「――あっ、お兄ちゃん。お帰りなさい」

「ただいま。頼まれていた肉まんとあんまんを買ってきたぞ」

「ありがとー、お兄ちゃん!」

 

 パジャマ姿の妹が、俺からコンビニ袋を受け取り自室へと入っていく。

 

「あの……優斗君」


 少し緊張した面持ちで話しかけてくる山城綾子。

 

「どうかしましたか?」

「ううん。出かけているってお風呂を出た時に聞いて……」


 少し体を震わせている。

 おそらくは、俺が居れば大丈夫だと神社庁の連中からも言われたのだろう。

 そして、それは逆を返せば俺が居なければ問題が起きるとも考えられる。

 彼女は、俺がいなかったから不安になったのかも知れないな。


「俺には悪霊とか、そういうのは分からない。だが……神社庁の連中も周辺で護衛してくれているから問題ないはずだ」

「そうかしら?」

「ああ。実際、俺が居なくても変なのは見なかっただろう?」

「う。うん……」

「とりあえず一週間は、仕事だからな。一生懸命、俺が出来る範囲で護衛させてもらう」

「ありがとう。それで優斗君、聞きたいことがあるのだけれど……」

「聞きたいこと?」


 コクリと頷く山城綾子。

 その表情は真剣そのもので――。


「とりあえず風呂に入って出てくるまで待っていてもらえますか? お湯が温くなると、温めるのに、ガス代がかかるので」


 俺の返答にキョトンとした表情を見せるが、俺は畳みかける。


「眠く鳴ったら寝てください」

「……わかったわ。優斗君、あなたが治した爪のことで聞きたいから、あとで部屋に来てね」

「了解」


 やっぱり、爪を直した時のことだったか。

 どうやら意識の方も取り戻していたみたいだし、厄介だな。


 そのあと、俺はすぐに風呂に入る。

 そして、ふと気が付く。

 公団の周りに多くの人員が配置されていることに。


「襲撃あとだからか……」


 それしか考えられない。


 



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