第19話

「桂木さん、こいつは――。かなり危険な感じですね」


 どうやら、エレベーター内の雰囲気が一変したことを山崎も感じ取ったらしい。

 さすが俺の殺気に気が付いただけのことはあるな。

 もしくは戦場で生きてきた野生の感なのかも知れない。


「そうだな」


 俺は、エレベーター内のボタンをネットの掲示板に書き込まれていた内容の通り、順序立てて押していく。

 すると、その都度、エレベーター内の雰囲気が薄暗く――、そして生物にとっては忌避感を覚えるほどの重圧に苛まれていく。

 そんな中、山崎がボストンバックからベストを取り出し、すばやくジーンズとYシャツの上に着付けていく。

 さらに拳銃をバックから取り出す。


「それって、サバイバルゲームとかで使う拳銃か?」

「何を言っているんですか? こんな危険な場所に来るのにオモチャなんて持ってくる訳がないでしょうに」

「だよな」


 山崎が、拳銃をバックからさらに取り出す。


「桂木さんも使いますか?」

「俺も分も持ってきたのか」

「もちろん。遠距離武器はあった方がいいですからね」

「なるほどな」


 放り投げられた拳銃を空中で受け止める。

 

「これは何て銃なんだ?」

「デザートイーグルですよ」

「デザートイーグルか」

「それと、これが銃弾です」


 箱に入った箱を受け取る。

 拳銃を手にしたのは初めてだな。


「一応、そのデザートイーグルには、すでに徹甲弾を装填済みなので、あとは安全装置を解除すれば打てますよ」

「そうか。それにしても、よくも――、こんな物騒な代物を一般人がもつ事ができるな」

「まぁ、元々は傭兵部隊の人間ですからね。蛇の道は蛇と言いますから」

「そうか。まぁとりあえず――」


 俺は言いかけたところで、エレベーターのドアが開く。

 そして白いワンピースを着た女がエレベーターの中に入ってくると、エレベーター内の空気は、重くなる。

 

「それにしても……」


 俺はエレベーター内に入ってきた女の頭を掴むとエレベーター内に叩きつける。

 猿のような叫び声を上げながら必死に抵抗し、空虚な瞳で俺を見てくるが――、俺はそのまま女の体に1億ボルト近い電流を流し消し飛ばす。


「桂木さん……。いまのは――」

「ああ、都市伝説でエレベーターの怪異を起こした場合、エレベーターに入ってくる奴がいるらしいという書き込みがあった。話しかけるなと書かれていたが――」

「いま、思いっきり干渉してたような……」

「まぁレイス系だからな。エレベーターの怪異を引き起こしている連中と、どういう繋がりがあるか分からない以上、敵は倒しておいた方がいい」


 俺は、そもそも話し合いに来た訳ではないからな。

 謂わば、都に迷惑をかけた責任を取らせるために来ているだけに過ぎない。

 

 山崎と話している間にもエレベーターは1階に向かって降りていく。

 そして――、1階を過ぎて更に下へ。


「こ、これって……」

「どうやら成功したみたいだな」


 エレベーターは、地下数百階まで降りたところで停止。

 そしてドアが左右に開く。

 ただし、開いたドアの先は普通のタワーマンションの通路となっていた。






 

 

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