第6話
過疎化している商店を横目に、俺は駅へと続く道へと左折する。
そこで、前方から黒塗りのクラウンが向かってくる事に気が付く。
車は、真っ直ぐに俺の方向へ向かってくると、そのまま俺の横を通り過ぎ学校の方へと向かう。
「巫女?」
一瞬、擦れ違う時に黒いスモークガラスの向こう側――、車の後部座席に巫女と神主が乗っている姿が見えた。
「神職か。税金を払わないから金もっているよな」
どこに向かったのかは知らないが、宗教ってのは税金を払う必要ないと聞いたことがあるから、金だけは持っているのだろう。
そうじゃないと、高級車に乗れないし、まして運転手なんて雇う事もできないだろう。
「まぁ、向こうも同じだったからな」
宗教関係というのは信者が居ればお布施とかで稼げて、そういうのを実際見て来たし腐敗した組織も数えきれないほど見てきた。
まぁ、いまさらってところだろう。
日向駅から千葉駅まで電車を乗り継ぎ駅で降りたあとは地下駐輪所で自分の自転車を探す。
正直、30年前の記憶だから、どこに自転車を置いたのか覚えていない。
1時間近くかけて、自転車を見つけたあとは地下から自転車を引いて外へと出る。
そして自宅前に到着したのは30分後であった。
公団住宅のエントランスに到着し郵便受けを確認していたところで、「お兄ちゃん!」と、抱き付いてくる妹が!
視線を向けると、そこにはツインテールの黒髪美少女と揶揄される事がよくある自慢の妹がいた。
「どうした? 妹よ」
「どうした? じゃないから! 学校から、連絡があったんだよ! お兄ちゃんが、事故にあったって!」
「そうなのか?」
「うん! 純也さんも、都さんも、すごく心配してて、あとで来るって言ってたよ! それにしても、お兄ちゃん!」
「なんだよ……」
「本当に良かった。何にもないみたいで……ぐすん」
たしか、30年前に日本で暮らしていた時は、親父が海外に出張に行っていく事が決まって、母親も一緒に付いていくことになったんだっけか。
そうなると俺が異世界に召喚されてからは、ずっと妹の胡桃(くるみ)は一人で頑張っていたのかもな……。
「胡桃……」
「お兄ちゃん。えっとね……、話は大まかに学校から教えてもらったけど! とりあえずね! その服の染み! 早く落とさないと落ちなくなっちゃうよ! 早く、洗濯しないと!」
「そうだな……」
「ケチャップって聞いていたけど、すごくリアルな色だよね?」
「そうか?」
「うん。だって、男の人とは女は違うからね!」
「あー」
何となく察した。
ただ、それを口にすることはしない。
それにしても、あとで来るとは……律儀な奴らだな。
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