第4話
車が燃え上がり、ガソリンに引火することで爆発を引き起こし黒煙が舞い上がる。
国道は、炎により封鎖されており、しばらくすると大勢の人だかりができ始めた。
多くは学生服を着た人だかりで、放課後に部活をしていた人が、煙が立ち上るのを見て気が付き好奇心から見にきたのだろう。
そうこうしていると、サイレンを鳴らしたパトカーや消防車が到着する。
「これは酷い……。すぐに消火活動をするぞ!」
消防車から降りてきた隊員が、燃えている車の消火活動を開始し、パトカーから降りた警察は、こちらへと向かってくる。
「連絡をしてくれたのは――」
「私です!」
商店街の親父が手を上げる。
「何がどうなって、こうなったんですか?」
「私も途中からしか見ていないので……。ドーン! という大きな音が聞こえてきて、店の外に出たら、車が電柱にぶつかっていたんです。それと、そちらの少年が、ガードレールにぶつかったのを店のカウンターから見ました。車が衝突した場所は、店の中からは死角だったので」
「そうですか」
親父さんと話していた警察が、俺の方へと近寄ってくる。
「ちょっといいかな?」
「待ってください! その少年は血塗れですよ! すぐに病院に連れていかないと!」
警察が俺に話しかけようとしたところで、少し遅れて到着した救急車から降りてきた救急隊員が走って近寄ってくると強い口調で話に割って入ってきた。
「血って……」
そこまで警官が呟いたところで目を見開く。
俺の学ランは黒色で、しかも日陰にいたから気が付かなかったのだろう。
しかも俺は平気な顔をしていたし。
「な……。君は、大丈夫なのか!?」
そこで、ようやく事の重大さに気がついたのか警官が俺に問いただしてくる。
「大丈夫とかではなくて、すぐに病院に搬送しなければ! そちらの女の子は――」
「美香子!」
そこで、女性の悲鳴のような声が聞こえてくる。
そして駆け寄ってくる20代後半の女性。
「ママーっ!」
先ほどまで何が起きたのか分かっていなかった女の子は、母親であろう女性に名前を呼ばれたことで、こちらへ向かってくる女性へ向かって駆け寄っていく。
そして、大勢の視線が、親子に向けられる。
「幸恵さん。この男子学生が、美香子ちゃんを助けてくれたみたいですよ?」
「厳さん、そうなのですか?」
「ええ。私も詳しいことは知らないんですが、そこの男子学生さんが、美香子ちゃんを抱えていたのを見たので」
「――え? どういうことなのですか?」
「たぶんですが、車に轢かれそうになった美香子ちゃんを助けるために、美香子ちゃんの代わりに車に轢かれたと思いますよ」
商店街の親父さんの言葉に、顔色をサッ! と、青くする女性。
「ほ、本当なのですか?」
震える声で、女性は俺に話しかけてくる。
まったく、余計なことを言ってくれる。
俺は、注目されるのが嫌なんだが……。
「気のせいです」
「気のせいじゃないだろ! 俺は、あんたが美香子ちゃんを抱きしめて空中を飛んで行ったのを店の中から確かに見たんだ!」
「きっと空想か何かだろ?」
俺は肩を竦める。
「とにかくだ! 事の真相はあとで調べるとして、すぐに病院にきてくれ! それだけの出血が出たんだ! 大変なことになる!」
救急隊員が、俺に話しかけてくる。
その声色は真剣そのもの。
「俺は、何処も怪我していない。それに、この血は、家庭科の授業で使ったトマトケチャップの残りだ。それに大体、本当に、血がこんなに出ていたら、もう死んでいるか倒れているだろう?」
俺の説明に困惑する現場の面々。
「とりあえず、その車は道路にボールを追いかけてきた女の子を轢きそうになったから助けた。そして車は、女の子を轢かないようにとハンドルを切ったことで電柱に激突して爆発炎上。あと車を運転していた人は、俺が助けたくらいだから大したことはない」
「本当に……だ、大丈夫なのか?」
「俺が問題ないと言っているんだから問題ない。それより、事情聴取をした方がいいんじゃないのか?」
俺は車を指差して警官へ告げた。
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