マスクの下も可愛い

@kekumie

第1話マスクの下は見せてくれない

俺が小二の頃、天野さんは肺の病気にかかり、マスクをつけての生活を余儀なくされた。そして俺が中三の頃、天野さんの肺の病気は治ったが、一向に天野さんはマスクを外そうとしない。本人曰く、マスク生活が長く続いたため、みんなにマスクの下を見れるのが恥ずかしいんだとか...


天野さんは美少女である。背中の真ん中ほどまで伸びたきれいな黒髪に、琥珀色の目、長いまつ毛にその整った顔、そして身長も平均より少し高く、スタイルもいい。

だが、天野さんのマスクの下の顔を見た人は今のところ、天野さんの家族ぐらいしかいない。


帰り道、茶色に舗装された歩道を歩いていると前にきれいに伸びた黒髪をしている少女がいた。俺は小走りにその少女へと駆け寄る。

「天野さんじゃん」

と左斜め後ろから声をかけるとその黒髪の少女は俺のほうを向く。

「あっ、廊下でこけた人だ。こんにちは」

こちらを振り向いた少女は目は琥珀色で、まつげが長い。そしてマスクをしている。

声は少し高い。

かれこれ一年ほどなにもないのにマスクをつけている。まぁマスクをつけるのは自分が決めることだしつけても普通にいいんだけどね。

「天野さんもこけてみる?みんなの視線が一斉に自分に集まるよ」

「私注目浴びるのとか苦手だから」

「同感」

そして十歩ほど歩いて赤信号に捕まった時にまた話しかける

「そういえば天野さんってずっとマスクしてるよね。もう病気も治ったのに」

「まぁね、でも恥ずかしいから」

天野さんがそう答えると、俺は興味本位で一つお願いしてみる

「天野さんがマスク外した姿ちょっと見せてくれない?」

答えは即答だった。

「えっいやだけど」

「返答早くね!?」

思わず突っ込む。そこまで見られたくないとは。

「私、マスクの下長い間見られてなくて恥ずかしいからさ。あとかわいくないから」

俺は小二のころまで記憶を遡る。そしてもう7年以上たってるからわからないが、天野さんは普通に可愛かったと思う。

「俺の記憶では可愛かったと思うんだけどなぁ」

俺は天野さんのマスクを見ながらそう呟く。白色の至って一般的なマスクだ。

「気のせいだよ、たぶん」

そう言った天野さんの目は、少し嬉しそうだったと思う。

そのあとは二人で雑談をしながら帰路につく。そして俺が家に到着したため別れることになった。


家に帰り、夕食と風呂を済ませて家でスマホを眺めていると一件の通知が来た。その通知はSNSで天野さんからだ。

俺はその通知を開く。

その内容は『今期のアニメどれ見てる?』だった。

俺は見ているアニメ五個ほどを書き、送信した。

そしてなんとなく天野さんとの会話のやりとりを遡る。

だが一向に上にたどり着かない。なぜかというと天野さんとやり取りを始めたのは三年ほど前からなのだ。そりゃ長くなる。

そして指も疲れてきたころ、スクロールしてもこれ以上上までいかず、やっと上にたどり着く。そしてその最初の会話は『今期のアニメどれ見てる?』だった。

まったく同じ内容だ。そういえば天野さんとの会話は漫画やアニメの話が多い。

家で一緒にアニメ見たっけなぁとその記憶を思い出していると返信が来た。

頑張ってここまでスクロールした画面を一番下まで戻すのは少し抵抗があったが決心を決め下に戻ると返信は『私も同じの見てる』だった。

俺は 『気が合うねぇ』と返信し、スマホの電源を切る。そしてベッドでごろごろ回りながらぐーたらしてたらスマホからバイブ音が鳴り、スマホを開くと天野から着信が来ている。俺は緑色の通話に出るマークを押す。

「今週末緑川君の家いっていい?」

「いいよ~」

そう返事すると

「じゃあ土曜日行くね」

そう言い。天野は電話を切った。チャットで伝えればいいのに。そう少し思ったが、すぐに、まっいいかと思いまたベッドをごろごろ転がっていると眠気が襲ってきて、すぐに眠りについた。

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