『目の前の危機』

N(えぬ)

奴が現れた、だが……

機械が完全に自律し、人間を敵と見なしたあと、機械と人間の間に泥沼の戦いが勃発した時代……。



「おまえが、ジョニー・フジイか?」

 ジョニーの前に現れた全身黒革のスーツに身を包んだ屈強な男はそう言って立ち塞がった。

「何だよ?おまえ誰だ?俺はおまえに用はない!」そう言ってジョニーは黒スーツの男を押しのけて行こうとした。が、黒スーツはビクともしなかった。

 黒スーツは目から何らかの光線を出してジョニーに浴びせていた。

「おまえが『ジョニー・フジイ』であるという確認が取れた。私はおまえを守りに来た」

「え?なに?誰から俺を守るんだよ?」

「これから30年後。機械と人間の間に戦争が起きる。その戦争の人間の側を率いて、人間を勝利に導くのがジョニー・フジイ、おまえなのだ」

 ジョニーは少しの間、黒スーツの男の顔を真面目な顔で見つめたが、やがてプッとひとつ吹き出して、

「で、あんたは未来から俺を守るために送り込まれて来た、ってこと?」と言って笑った。

「そうだ」

「つまり、別のあんたみたいなヤツが、俺を殺すために送り込まれてくるから、その相手からあんたが俺を守る?と?」

「その通りだ」

 ジョニーは、また少しの間、黒スーツの男の顔を真面目に見たが、今度は笑わずにただあきれ顔をした。

「機械と人間の戦いで、俺を殺しに来るのは機械で、それを阻止するために未来から送り込まれてくるのも機械なんだ?……それは、機械同士の戦争じゃないの?」

「う、う、いや、そ、いや……」

 ジョニーは口笛を吹きながらハイスクールの友人の中に混じって去って行った。黒スーツの屈強な男は、何かつぶやきながらジョニーの後ろ姿を見送っていた。

 ジョニーは、ふと振り返ると言った。

「また来なよ」

「そうする」

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『目の前の危機』 N(えぬ) @enu2020

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