窓際のアカシックレコード
橙コート
序章
プロローグ
いつからだろうか。ぼんやりと窓の外を眺めるようになったのは。
俺は、中学二年生の頃からだ。
いつからだろうか。
異能バトルに、自身の異能を駆使し、戦う存在に、憧れるようになったのは。
いつからだろうか。
青春ラブコメに、ともに青春を送る嘘偽りのない関係に、憧れるようになったのは。
いつからだろうか。
タイムリープに、何度も同じ時間を繰り返し、奮闘する姿に、憧れるようになったのは。
いつからだろうか。
アイドルに、夢を追うことの素晴らしさを教えてくれる存在に、憧れるようになったのは。
いつからだろうか。
セカイ系に、自分の思い通りに変化してくれる都合のいい世界に、憧れるようになったのは。
非日常。それは俺たちに、幸せを与えてくる。そしてだんだんと、非日常が日常的に存在することが、当たり前になってくる。だからこそ、たまに忘れてしまうことがある。それが特別なものであるということを。それが「手に入らないもの」であるということを。
いつからだろうか。非現実を、逃げ場にするようになったのは。
いつからだろうか。非現実を、自分で再現しようと考えるようになったのは。
いつからだろうか。非現実を、最後の砦であると認識するようになったのは。
いつからだろうか。非現実を、道具のように扱うようになったのは。
いつからだろうか。非現実を、見つけられなければ死んでしまおうと思うようになったのは。
世界は絶え間なく変化する。それは、良い方向に作用することもあれば、悪い方向に作用こともある。人間関係、恋愛、生きがい、仕事や学校、生活環境。それらは、いとも簡単に変化する。不変なものなど、この世には存在しない。
人は誰しも、その変化に恐怖する。
これは、非日常に憧れるすべての人たちに送る一冊の〝小説〟。
これは、ある少年の日常の〝記憶〟。
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