第2話 なんでもできる仮想空間
人の活動によって収集された情報を基に、音楽やゲームなどの娯楽もAIがどんどん生み出してくれる。飽きる暇なんてまったくないし、むしろいくら遊んでも時間が足りない。仮想空間の可能性は無限大なのだ。冒険に出たり、街づくりをしたり、アーティストになったり、お店を持ったりする人もいる。中には、自分だけの世界を構築している人もいる。
ちなみにわたしは、AIによって作り出された煌びやかなダンジョンを冒険するゲーム「幻想ダンジョン探検」と、自分好みのイケメンと本物のような疑似恋愛が楽しめる「恋シュミ」にハマっている。どちらもAIにオススメされたもので、ビジュアル、ゲーム性、難易度、方向性などどこをとっても驚くほどわたし好みで、なおかつきちんと捻りもあって驚かされる。
――ああ、そうだ。
たしかダンジョン探索で手に入れたアイテムで素敵なインテリアがあったはず。
【my room】の模様替えでもしよう。
オートもいいけど、たまには自分で1つ1つ組み立てるのも楽しい。
もうすぐヒロトとデートだし、服も新調しておかなきゃ。
「かしこまりました」
ちなみにヒロトというのは、恋シュミで作ったわたしの彼氏だ。インテリ眼鏡男子で、ちょっと俺様だけど何だかんだで溺愛してくれる。そのバランスがまた絶妙で、今ではすっかり彼の虜だ。
仮想空間内の【my room】に戻ると、早速AIが用意してくれた新しい服、下着、靴、アクセサリーなどが一式並んでいた。わたしの好みとヒロトの好みから設計してくれた、どちらにとっても完璧なアイテム。これでまたヒロトの溺愛度が上がっちゃうな! ふふ。
「陽葵さま、そろそろ昼食のお時間です。何かご希望はございますか? 朝食が洋風だったので、オススメは和風ハンバーグセットです」
「じゃあそれで」
「かしこまりました」
AIは仮想空間にも自由に出入りできるため、趣味に没頭していてもこうして必要な情報は教えてくれる。定期的な食事を摂るのが面倒であればそれ自体を省いてしまう方法もあるが、わたしは食べることが好きなのでこの行為をやめる予定はない。「おいしい」という快感は、私の人生においてかなり重要な、欠かせないものなのだ。
「陽葵さま、昼食の用意ができました。今召し上がりますか?」
「うん!」
ちょうどキリがよかったため、わたしは現実世界へ戻って昼食を摂ることにした。和風ハンバーグはとってもジューシーで、大根おろしの入ったさっぱりソースがよく合う。ソースは少し酸味があり、その酸味がより食欲をかきたてる。ご飯もわたし好みの甘みがあり、粒がしっかりしていながらもちもち感も味わえる絶妙な炊き加減。正直言って100点だ。
「食後のデザートはチーズケーキがいいな」
「かしこまりました」
――昼食を食べ終えたら、またダンジョンに潜ろう。
ダンジョン6階にある美しい湖は「神の湖」と呼ばれていて、これに入るととてつもない快感が味わえるらしい。これはぜひとも行かなければ。
AIは、人間ではとても思いつかないようなものを次々と生み出すから本当にすごい。仮想空間は装飾も凝っていて、まるで夢の国にいるかのような感覚が味わえる。それにAIには感情がないはずなのに、AIが描く物語や音楽はいつも驚きと感動で溢れている。登場する人間たちも、感情も言動もとてもバリエーション豊かだ。わたしたちが何もしなくたって、AIは勝手に人の代わりに学び、知識を充実させてわたしたちを豊かにしてくれる。
わたし、今の時代に生まれてよかった。
今の生活がない世界でなんて生きられないよね。
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