先輩を改めて注文してみた
ソファに腰を掛ける。
先輩は緊張しているのか少し震えていた。俺もだけど。
「で、では……寝て下さい」
「せ、先輩の膝に頭を乗せていいんだよね」
「ど……どうぞ」
ゆっくり横になり、俺は先輩の膝に頭を預けた。これ、膝枕でもあるんだよな。……俺は今、人生最高の時間を送っている。
「お願いするね」
「はい、動かないでじっとしていて下さいね」
俺の右耳に耳かきが進入してくる。
先輩は絶妙な加減で耳の掃除をしてくれた。うわぁ……すげぇ気持ちい。先輩ってこんな上手いんだ。
「…………」
「どうでしょうか……?」
「ぶっちゃけ、最高っす。さすがフリージアで働いているだけある」
「良かったぁ、ちょっと緊張していたので心配でした」
「先輩に膝枕して貰えるだけでも幸せなのに耳かきまでして貰えるとか……もういつ死んでもいいレベルだよ」
そうだ。いつまでも先輩とこんな生活を送りたい。それが本音であり、望みだ。俺はこの生活を維持する為ならなんだって出来そうだった。
「大袈裟ですよ、ご主人様」
耳かきを終え、俺の耳に息を吹きかける先輩。あまりに不意打ちだったものだから、俺は背筋がゾクゾクっとした。
「今の……良い。先輩、ありがとう」
「いえいえ。これくらいなら、いつでもしますから」
「それは嬉しいよ。そろそろ飯にしましょ」
「分かりました」
もちろん、先輩の手料理。
キッチンも使い慣れたようで、今までよりも効率が上がっている。今回は俺もある程度手伝った。その結果、テーブルには豪華な料理が並んでいた。
「おぉ、見事な中華セットだ」
「チャーハンにラーメン、餃子もあります」
なぜか中華になってしまったが、これはこれでイイ。さっそく椅子に座り、先輩と仲良く隣同士で手を合わせた。
「「いただきまーす♪」」
さあ、味付けは如何ほどか!?
レンゲがないのでスプーンでチャーハンを掬う。おぉ、パラパラで美味そうだ。それを口に運び――噛み締める。……シンプルに美味い。
「先輩、美味いよ!」
「良かったぁ、中華はあんまり作ったことが無かったから」
「それにしては上出来だよ。いやぁ、本当に涙が出るほど美味い」
ぱくぱく食べていると、先輩の愛情をたっぷり感じた。もうスープンは止まらない。あっという間にたいらげ、俺は涙した。
「ご、ご主人様!? 大丈夫ですか」
「嬉しいんだよ、先輩がこんな美味しいモノを作ってくれるとかさ」
「ふふ、ご主人様って純粋なのですね」
「そうかもしれないな」
食はどんどん進み、気づけば食べ終わっていた。それから片付けも終え――ソファでくつろいでいると、先輩が隣に腰を下ろした。
「……終わりました」
「先輩、何から何までありがとう。本当に感謝しかない。先輩……」
俺は思わず先輩を抱きしめた。
ガチで感謝しかなかったからだ。
これが俺にできる最大の愛情表現だ。
「……ご主人様。もうそんな事されたら泣いちゃうじゃないですか」
「それって引いてはないですよね?(←つい敬語)」
「もぉ、そっちじゃないです。心の底から嬉しいんですっ」
先輩がぎゅうぎゅう抱きついてくる。
こんな小さくて可愛くて、メイドの先輩……俺のモノだけにしたい。独り占めしたい。ずっとずっとメイドにしたい。
「先輩、注文いい?」
「はい、なんでしょうか」
「俺は……先輩が欲しい」
「……はいっ、わたしはご主人様のものです」
ゆっくりと目を閉じる先輩。
すべき事は分かっている。
俺は先輩にキスをした――。
◆
――その後の話を少しだけ。
俺と先輩は変わらず自宅で特殊な関係を築き上げていた。
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