ぐいぐいくる美少女転校生

篠原しのはら まゆです。よろしくお願いします」



 自己紹介を終え、俺の隣の席にやってくる転校生。偶然・・にも空いていた。


 なんで都合よく空いているんだよッ!


 しかもその視線は俺に向けられていた。見すぎだろ、俺を。



「あー…、転校生。俺に何か用かな」

「繭って呼んで」

「いやぁ、いきなり名前呼びはどうかと」

「いいの。幼馴染だし」


 なんか勝手に幼馴染認定されている。

 記憶がないんだがなぁ~…。いや、ひょっとすると本当に幼馴染なのかもしれない。あまり無碍にするのも悪いか。そうだな、彼女はまだ転校してきたばかり。右も左も分からない。ここは優しくしてあげるべきだな。



「分かった。幼馴染って事にしておく。よろしく、篠原さん」

「うん、よろしくね、紗幸くん」

「いきなり名前か。まあいいや」



 こんな可愛い転校生にいきなり名前で呼ばれるとか、別に悪い気はしない。寧ろ大歓迎。



「良かった、紗幸くんの隣の席で」

「そ、そんな見つめられても、あげられる物なんてないぞ?」

「あたしが欲しいのは紗幸くんだけ」



 そんな風に言われ、ドキッとした。

 まてまて、最近の俺どうしちゃったの。先輩メイドといい……なんで、こんなモテ期到来しているんだ!?



 だがまぁ、男には(人にもよるが)モテ期・・・がある。今、俺はそのピークに達しているのだろう。多分!!



「俺が欲しいって、篠原は変わってるな」

「うん、否定はしない。自覚あるし」



 あんのかよ。う~ん、篠原って変なモノ好きなのかもしれないなあ。



 ◆



 午前中の授業が終わり、教室を出ようとすると篠原に止められる。



「紗幸くん、どこ行くの」

「ちと野暮用。篠原はクラスメイトの女子と仲良くやってくれ。その方がいいだろ」

「紗幸くんがいい」


「へ」


「君と一緒がいいのっ」



 ……これは参ったなぁ。

 そんな頬を膨らませて顔を真っ赤にされて言葉にされるとは思わなかった。一昔前のツンデレみたいだ。


「分かったよ、篠原。でも、先輩も一緒だ」

「ああ……桜坂さくらざか 咲穂さほ先輩ね」

「もう覚えたのか」

「人の名前を覚えるのは得意だよ。それに、すっごく美人だったから忘れないよ」



 へぇ、篠原から見ても先輩は美人の部類か。でも、そう言う篠原も相当だけどな。実はアイドルですって言われたら信じる自信があるほどだ。


 そんなわけで、篠原を連れて廊下に出た。その先には先輩が待っていた。分かっていたけど。



「お待たせです、先輩」

「鐵くんっ……って、その子」

「あー…ウチのクラスの転校生でした」

「て、転校生!? うそー…」



 目を白黒させる先輩。

 そりゃー驚くよな。俺だって驚いた。



「はじめまして、先輩。あたしは篠原しのはら まゆです。アイドルユニット『ウィンターダフネ』のリーダーをやってます」



 へー、篠原のヤツ、アイドルを……アイドルを……アイドルうぉ?! 思わず、心の中で声がひっくり返る俺。ちょ、まて……んな事、一言も言わなかったじゃないか!! なぜ、先輩に対して言うんだか。



「なっ……ウィンターダフネって、あの有名な……」

「はい、先輩。でも、今は休止中なので、転校してきたんです。よろしくお願いします」

「うぅ……」



 なぜか弱々しくなる先輩。

 というか、ウィンターダフネって……聞いた事があった。先輩が口癖のように言っていた単語だ。しれもそれは、先輩も憧れてるっていう『メイドアイドル』だ。



 なんて運命だ。

 こんな形で先輩と篠原が引き合わされるとはな。……てか、ん!?



 先輩が俺の右腕を。

 篠原が俺の左腕を。




「鐵くんは、わたしと!!」

「紗幸くんは、あたしとです!!」




 気づけば、二人が俺の腕を引っ張りあってええええええええ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああ…………ッ!!!!!

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