人の魔王と魔族の勇者

絶対に怯ませたいトゲキッス

第1話人の魔王と魔族の勇者

さて、世界には二つの種族がいる。人間と魔族。絶対に交わらないついの存在。そして、その種族を象徴する存在、勇者と魔王。数十年に一度不定期で生まれるその存在は、今まさにお互い死のうとしていた。

「ハアハア。傷口が深い。もう無理だな、これは。」

勇者ルークは腹に魔法で穴を開けられて。

「勇者め、やるな。流石、わが好敵手。」

魔王リオネは足と手4本に多量の出血がある。

「どうだ?来世はお前と私で手を組むというのは?」

魔王の方が冗談まじりに誘う。

「はは、冗談はよせよ。天地がひっくり返ったってそんなことにはならねえ。」

勇者は初めて魔王の前で笑った。

「そうか。残念だ。」

そういいながらも、魔王はポーカーフェイスを崩さない。

「それに、来世なんて不確かなものがあるわけないだろう。あったとしても前世の記憶が残ってるわけないじゃないか。」

「‥‥、本当にそう思うか?・・・・・うっ!!残念だけどお喋りもこれまでみたいだな。わたしの方が先見たいだ。」

魔王の体には一瞬激痛が走り、そして痛覚が完全になくなってしまったようだ。

「ははは。俺もそろそろだよ、、、いつになったら、

、」

勇者が懸命に紡ぎだしたこの言葉を私は薄れた意識の中で聞いていた。


夢のなかでわたしは言っていた。これは、、、わたしが初めて魔王になると決まった時だ。透き通るよな目と甘い笑顔で

「この世界を平和にしたい。」

といっている。おいしい食べ物がたくさんあって、匂いも思い出せた。周りの仲間たちも一緒に笑っている。一番幸せな時間だった。いつからそれが人間を滅亡するという願いにすり替わったのだろう。いつから、、、


「魔王リオネよ、起きなさい。」

聞こえてわたしは目を覚ました。

「誰だ?」

不思議な空間だった。どこまでも続いているかのような白い空間。匂いさえ感じさせない無臭で、塵アリひとつ何もない場所。目の前には白装束の女。布で顔を隠しているが、相当な美人だとわかる。

「あなたの世界で神とでも言われている者です。」

神。神だと?様々な伝承では人間と魔族の戦いに大きく干渉をした存在とされている。しかし、伝承の中でもめったなことではこの世の中に現れないはず。偽物か?

「神だと?疑わしいな。この世界に来ることなどほとんどないはずだが。」

怪しげな美女をきっとにらむ。相手を威嚇し、それえの反応でどれぐらいの強さ化図れるはずだ。

「ぷっ、はっはっはっはっは!面白いわねあなた。」

魔王の眼光を恐れることもせず、彼女は甲高い声で笑った。

「何者だ?」

怯んではいけないと思い、さらに強く睨み返す。

「逆に?ここがあなたがもといた世界だと思ってる?」

!そうか、ここは死後の世界という可能性が高い。

「なるほど、一理あるな。」

「ふふ、案外素直ね。素直なのはいいことだと思うわ。」

おそらく、装束の中で彼女は笑みを頬に浮かべているのだろう。

「ただ、神だと?それを信じるかどうかは眉唾ものだ。そもそもそんな存在を私は信じていない。」

「あら。魔族に身体的な強化を施しているのは私たちよ?」

身体的な強化だと?

「身体的な強化って何のことかわからないって顔してるわね。」

「心が読めるのか?」

「いや。でも生物の考えてることは大体わかるわ。長寿の勘ってやつね。」

・・・・面倒くさい相手だ。戦闘になった時に勝てるか、は考えても無駄かもしれない。

「ほら、あなたの頭についている角と羽。それをあなた達に渡したのは私たち神。」

魔族の角は魔族自身の身体能力及び魔法量を増大する器官、羽は魔族を飛ばす器官だ。つまり、魔族は角と羽がなければ大幅に弱体化する。

「ふふふ、まだ信じてないわね。私が神だってこと。」

「当たり前だ。誰が言ってもおいそれと信じることができる事実ではない。」

そうねえ、と彼女はつぶやいた。

「この際、信じてくれなくてもいいのよねえ。私が神だとか神じゃないとか、どうでもいいことなの。ただ、ある事実だけ認識してくれていれば。」

・・・・これには返答を返さない。

「どうか、変化を受け入れて。どうか、感情で動かないで。私は味方。あなた達は世界を変えられると信じてるわ。」

「お、おい。それはどういう意味、、、」

それ以外の言葉は信用できないが、最後の言葉だけは真実の言葉だ。魔王の名に誓って言える。しかし、言葉の真意を問いただせないまま私の意識は徐々に薄れていった。



ん、んん。どこだ?ここは。暗いな、光が入ってこない。洞窟だろうか。しかし、風も入ってきていないから違うな。

「あー生まれましたよー。」

ま、眩しい。光が目の中に入ってくる。

「おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ、」

声が、出ない。発声器官が発達していない。

「ほら、マドレーヌ。生まれたよ。」

手のひらで軽く体を持たれる。視界がどんどん高くなって、目が回りそうだ。

「ふふ、元気そうでよかったわ。」

なんだ、この周りにいる生物は。皆、巨人なのか。ドラゴンでもこれほど大きくはなかったぞ。



少し落ち着いて考えてみると、今私が陥っている状況についてわかってきた。まず一つ目、私は子供である。声も出せないぐらい。そして、二つ目残念ながら、非常に残念ながら私は、今人間である。どうやら、私は憎き人間に生まれ変わったようだ。


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作者の絶対に怯ませたいトゲキッスです。人の魔王と魔族の勇者一話目を読んでいただき大変ありがとうございます。これから先、どんどん面白くしていく予定ですので、ぜひこれからもご愛読、評価お願いいたします。作者のモチベーションアップにつながります。また感想、アドバイス、批評どしどし送ってください。まだ初学者でありますがよろしくお願いいたします。












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