デイライフ―1日限定ループ― ▼【異世界戦記】俺だけ本物の魔法使えるがどうしたらいい?【VRオンライン】

ゆめみじ18

第1話 デイライフ―1日限定ループ―

 西暦2021年12月25日、ある意味サンタクロースからクリスマスプレゼントを2つもらった。


「さてと、……どうしたものか……」

 世界線航(せかいせんわたる)は悩んでいた、考えていた。


 そこには現実世界に有る機械が2つ……――。


 右側にはVRMMOゲームが出来るデバイス、『テンジョウ』これでゲームをしたい所は山々なのだが……。

 左側にはデイライフ―1日限定ループ―、というのが置かれている。かっこ説明書付き。


「いや右側は昨今のVRアニメで観たから何となくわかるけど!? 左側が意味不明なんだが?! 何だコレ!? ソードナアートとリゼロンを掛け合わせたような組み合わせは!? まさかサンタさんはストーリーをごちゃ混ぜに組み合わせたら面白くなるなんて本気で思ってる訳じゃ無いだろうな!? 最近観たぞ! 8個ぐらいのパチモン混ぜて転生スレイヤーしようと思って1話打ち切りになったマンガを!?」

 しかし、あるものはある。

 あるんだからせめて有効活用しようと思うのは高校生のサガだ。


「だって、この2つで遊べって言ってるんだぞサンタさんは。なら遊ばなきゃ損だろ……」

 とはいえ、どうやって遊べば良いんだコレ……。

「VRゲーム機はとりあえず何となく判るから。とりあえず魔法道具の説明書を読もう……」

 そうして航は説明書の中身を開いた……。



◎デイライフのルール◎


【0】デイライフと唱えたら、1日限定でループをすることが出来る。

【1】ループする場所は自分がセーブと指定した場所からスタートする。

【2】死んだり死後の世界では、デイライフは発動できない。

【3】デイライフは世界で1つだけ存在し、それ以上には増えない。

【4】ループのことを他者に教えても、そのデメリットはない。

【5】デイライフにはログ制限数があり、その制限を超えたら強制ループする。

【6】時間の神様による、ルールの改変はありえる。

【7】ループには代償物を支払い、ループ後の世界にはその代償物は無くなる。

【8】他の魔法とかち合った場合、その優先度は最下位の後手で発動する。

【9】デイライフのルールは0~9個までで、それ以上にも以下にも出来ない。



 昨今のラノベや漫画雑誌が山積みになっている少年の部屋。

 物語ジャンク少年は一瞬で理解してしまう。

「ぎゃーコレ! ループするアイテムじゃーん!? ループって言ったら大体死ぬアニメしか観たこと無いぞ俺! 何だよコレ死ねって事かよ!?」

 しかし、……【2】で死んだら発動できないって書いてある……。死ぬの禁止ゲーってことかサンタさん?

「【5】のログって何だ? この最初に5000って書いてあった奴か? 今も動いてるし」

 みると、その魔法時計は秒速とも違う。不規則なテンポで4900・4850・4800と刻まれ。減ってゆく……。

「何も言わずに。ログが0になったら強制ループする訳か……。流石俺、順応性が速い。……とは言え……本当にループするのか判らない。まずセーブして、熊の人形を左右にずらして。それからソレを唱えてみよう。本当に戻るのか? パチモンなんじゃねーのか?」


 ログ数は3749と書かれている……、つまりあと少ししたら。何もしなくても強制ループすることを意味している。

「1日限定ループってことは、25日から26日に変わったら、リセットされるって事か? それから過去に戻れない事を意味するってことか……。いや、あるいはこの思考する過程こそがこのゲームの大宜味で。既にサンタさんの手の平の上って可能性も捨てきれない」

 さて、では自らデイライフと唱えるか。あるいはログ数限界まで遊んでから強制ループに入るか……。


「えーっとまずセーブして……」


 すると、ゲーム的なポップアップが飛び出してきた。現実世界にこんな魔法的なステータス画面は出てこない。

「えー! ちょっと待ってここ現実世界……!?」


《セーブが選択されました。西暦2021年12月25日7時15分でセーブします。》


「おおう、本当に来たか……。えっと後者はないな……、とりあえず熊さん人形を左側に移動させて……」

 そして唱える。

「念じるだけじゃダメなのか……、ちゃんと唱えないと。……ん~~~~~~~デイライフ!!!!」


《デイライフが唱えられました。西暦2021年12月25日7時16分から西暦2021年12月25日7時15分へループします。》


 つまり1分前なわけだが、律儀に西暦まで書いてらっしゃるとは……。

 そして世界線航はループした――。



 西暦2021年12月25日7時15分

 熊さんは左側に移動しておらず、真ん中に置いてあった。

「……、ふむ。確かに熊さんは真ん中に置いてあるな……。これで本当に本物なのか確定していいものか疑問だが……。えっと、ログ数は5000に戻ってる、のか……」


 ……。

 ――1分後。


「セーブ」


《セーブが選択されました。西暦2021年12月25日7時16分でセーブします。》

 

「このポップアップがすでにファンタジーなんだよなあ~」

 などと呟きながら。

「て言うかちくしょう! まだVRゲーム機に触れてねーじゃねーか! あ、とりあえず呟こっと」

 スマホを片手に。

 

 W〈魔法のループ機を手に入れたった。〉


 とだけ呟いて、ネット世界に送信した。

「……、この先がどうなるか判らんが。頼む! ゆるいゲーム設定であってくれ――ッ!!」


 あれ? ちょっと待って欲しい。

「あ! 確か【7】に代償物を払うって書いてある?! もしかして何か無くなってるのか!?」

 何かが無くなっている可能性がある。何が、無くなったんだと戸惑う。航。

 そして、無くなってるものが判った……。


 【右側にあったVRゲーム機が無い――。】


 ドタドタと、2階から1階へ下りてゆく航は母に聞く。

「母ちゃん! VRゲーム機は!? 無くなったんだけど!?」

 そこで母親は料理をしながら片手間で……。

「あら~、折角サンタさんが買ってくれたのにもう無くしちゃったの? 全く~、今度は自分で買いなさい~」

 悠然と、いや唖然とする航。

「な……! なんだってー!?」


 航のVRゲーム冒険譚は、始まる前から終わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る