夢の続き

金木犀

プロローグ 蛍光色の夢

夢を見ていた。見渡す限り霧深く、見える範囲には何もない。それでもわかるのは、そこに光があるということ。白い霧も見下ろす自分の手もその手の甲の痣もおぼろげながら目に入る。

夢の中ながらそれが普通ではないことを理解している。

だって見えないはず、霧に浮かぶ自分の手もそこにある痣も。


だって僕は目が見えないはずだから・・・。


それでもこれは夢だ。霧の中でもどこにたどり着くかが気になって歩みを進める。霧は自分の手は見えても足先が見えるほどには薄くはない。

そのまま歩き続ける。どのくらい歩いたのか、五分かそれとも一時間か。気が付くと目の前に大きな木が立っていた。緑の葉を揺らし大きくそびえている。

そこで気付く。風が出てきた。霧も少しずつ晴れていく。目の前の木は大きく、その幹は僕が三人くらい集まってやっと腕が回るくらい太い。

そしてその木の大きな枝に誰かが・・・。

「やあ」

その声の主は不思議な見た目をしていた。服装はなんて事のない長袖シャツにジーンズ。唯一変わっているのはその靴の色か。ピンクの蛍光色で不思議と緑の木に映えている。不思議なのはその顔。何だかまるで・・・。

「一人かい?」

その人物は言葉を続ける。声変わり前のような高くもなく低くもない声。僕は黙っているのも失礼だと思いうなずく。

「そう。でも変だね。君はどこから来たんだい?」

「気付いたら霧の中にいて、歩いてたらここに着いたんだ。君は誰?どうしてそんなものを被っているの?」

僕は聞かずにはいられなかった。おそらく僕より一、二歳は年下だと思われる彼は、顔に白い袋のようなものを被っていたのだ。畑で使う肥料とかが入っているあれ。しかもそんなものを被るなら開いているはずの目元にも穴はない。これなら僕が歩いてきたのも見えなかったはず。よほど耳が良いのだろう。

「ああこれかい?これはね・・・」

彼はもったいぶる。かなり不思議な少年のようだと僕は考えている。

「          」

「え、何?聞こえない」

「だから、           」


そして僕の目の前は真っ暗になる。

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