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 最初は単なる一目惚れだった。あの日、交差点の横断歩道で、向かいの歩道に立ち信号待ちをしていた君。夏の暑い日、君の着ているシャツの胸元が少し汗で湿っていた。俺は反対側の歩道で同じように信号待ちをしていて、キラキラと輝く君の汗がとても綺麗だと思った。


それから幾度か君の姿を目にするようになり、君がそう遠くには住んでいない事を知った。きっと最寄り駅も一緒だろう。気になり始めた……だから俺はあの晩、仕事から家に帰る君の後を追ったんだ。ストーキングをするのはもっと難しいものだと思っていたから、君が何の警戒心も無く自身のアパートの階段を上り、ゆっくりと廊下を歩き、ドアの前で一度立ち止まり鞄から鍵を出しそのドアを開けるまで、一度も気付かれずに済むとは思わなかったよ。


………もし、他にも誰か、君に好意を抱いている男がこんな風に君の事を監視していたら、君はいったいどうするんだい?俺が守ってあげなきゃ、誰が他に君を守ってあげられるだろう……。


これもきっと、一つの “愛” だよね。





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