第13話 2人の朝
「んー、せんぱい強いですね」
白鳥さんとゲームを始めてはや四時間、時計は既に午前二時を指している。
白鳥さんは自称する通り、ゲームがとんでもなく強かった。最初の二時間までは僕が優勢で勝ち続けていた。しかし、そこからは……一方的にボコボコにされ続けたわけである。
うん、僕の四百時間は泡と化しました。
「白鳥さん、プロゲーマー目指した方がいいよ……」
「せんぱいこそ、うちの妹より強くてびっくりしましたよ」
お世辞にも聞こえる彼女の言葉に、僕は内心ボロボロになりそうだ。
ゲームも一段落ついた雰囲気で、一気に眠気が襲ってくる。これはもうゲームに集中することは難しそうだ。
「白鳥さん、もう今日は終わろうか」
「えー、せっかく温まってきたんですよー?」
「悪い、僕が眠い」
そう言って僕はベットに向かう。
徹夜でやると言っておきながら、ここで寝てしまうのは申し訳ないな。そう思い、僕はクリア済みのゲームを取り出した。、
「一人用のゲームもあるし、やりたければやっていていいからさ」
「むう、分かりました」
白鳥さんは頬を膨らませ、むくれた顔をしてやりたいゲームを探し始めた。
それを確認して、僕は布団に吸い込まれるようにして入り目を閉じた。
「何されても文句言わないでくださいね」
なにか聞こえた気がしたが、それを気にする事はなく僕の意識は深い闇に落ちていった。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「んぱい、せんぱーい」
「んん?」
心地の良い眠りを妨げるように僕の名を呼ぶ声が聞こえる。嫌々ながらも目を開けると、
「あ、起きましたね」
目の前には、同じ布団に入っている白鳥さんがいる。
「ん、えええ!?」
一拍おいて、僕は布団を跳ねのけるようにベットから飛び出した。
一体どういうことだ!? なんで白鳥さんが僕のベットに!?
「すみません、あまりにも起きなかったのでつい」
「ついじゃないでしょ……そんなことされると勘違いするから……」
「……勘違いじゃないですよ」
僕の言葉の後に俯いてなにか言ったようだが、声が小さくて聞こえなかった。
この状況は非常にまずいのではないか。男の部屋に女の子一人、それに一夜を共にしてベットの中に二人で入っていた。
誰かに知れれば僕は世間体を失うだろう。
「司クーン、起きてるー?」
こんなタイミングで大家さんが部屋をノックしてきた。
まずい、大家さんにこの状況を見られれば何が起こるか分からない。大家さんが嫉妬で壊れるか、勘違いされたままいじられ続けるだろう。
ひとまず白鳥さんをベットに潜らせ、僕がドアを開けることにしよう。
「白鳥さん、ちょっとごめんね」
「え、何するんですか!?」
僕は彼女に布団をかぶせ、手で黙っているように指示して扉に向かう。
頼む、これでどうかバレないでくれ!
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