第12話 積みゲー消費

 白鳥さんがみどり荘に来てから丁度一週間が経った。ここのところは初日や二日目のようなイベントは特になかった。


 今日も学校が終わり、みどり荘に帰ってきた。明日から休日のために、僕は貯めに貯めたゲーム類を並べて何からやるか選別していた。


 夕飯を食べ終え、お風呂にも入った。そして僕はコーラと夜食のパンをキッチンから持ってきた。


 これから徹夜でゲームに没頭できるな。


「よし、あとはっと」


 ドアの廊下側に(ゲーム中、邪魔するなかれ)と書いた札を提げておく。前に大家さんにダル絡みをされて以降、ゲームをする時はこの札をかけている。


 まあ、大家さん相手に効果があるとは思えないけどな。


 これからパーリナイだと意気込んでモニターとゲーム機を起動すると、トントンとドアがノックされた。


「あ、あのっ! せんぱい、私もゲームしたいです!」


 白鳥さんのようだ。って一緒にゲームしたいだと!?


 僕的にはもちろん大歓迎なんだが、いいのだろうか。男と二人、一夜を共にすることになるのだが……


「いいけど……白鳥さんはいいの? 僕と同じ部屋にいることになるけど」


「せんぱいがそんなことする人じゃないことは分かっていますよ。それに私は軽い女じゃないですから」


 そう言うと白鳥さんはドアを開け、僕の部屋に入ってきた。


「これがせんぱいの部屋ですか。なんだがせんぱいらしい部屋ですね」


「そ、そうかな」


 僕の部屋は何もない。うん、文字通り机に椅子、あとは本棚くらいだ。


 モニターとゲーム機は机にあるけれど、どちらも邪魔にならないように置いている。シンプルながらも使うものにはこだわるようにした結果、単調な部屋になってしまった。


 僕は気に入っているからいいけれど。


 白鳥さんは僕が座るはずだった椅子に座り、コントローラーを持った。


「まずは何をします?」


 僕はベットからクッションを持ってきて床に座る。


「そうだね、白鳥さんは普段からゲームはする人?」


「うーん、妹と少しやるくらいですね。でも下手じゃないので覚悟してくださいね」


 やるからには本気で、ということらしい。僕もそのスタンスは好きだ。


 しかし、今日僕が消化しようとしていたゲームは一人用のRPGや恋愛シュミレーションゲームばかりだ。


 これらは諦めて、白鳥さんと楽しめるパーティゲームをしようと山のように積んであるゲームの中から、有名なバトルゲームを引っ張り出した。


「お、やっぱりせんぱいもそれ持ってるんですね」


「もちろん、ちなみに僕は……強いよ」


 配管工からボールに入るモンスターまで幅広いゲームのキャラを選んで戦いまくる某ゲームだ。


 僕の友達に世界上位の奴がいて、そいつとやっていたら嫌でも強くなった。そんな僕に挑もうというのか。


「負けませんよっ!」


 こうして長い夜が始まろうとしていた。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る