第55話

龍衝の激突で目の前で青い光が弾ける。

剣の硬度と俺のグローブ硬度も全くの互角。

だが、空中でも推進力が得られる俺の方が有利。


「……ぉおお!」


上代さんに横槍を入れられるのはめんどい。

だから、二人の距離を引き離そうと少し離れた位置まで鍔迫り合い状態で高城さんを運び出し、その勢いのままビル壁に叩きつけようと更に加速する。


……!!


しかし、高城さんのビルの脚が壁に接した瞬間に目の前から消える。

目では追いきれない速さ。

神経を耳に集中させ、その僅かな放電音を捉える。


上!


頭上から重力加速を乗せた上段切り。

両手でそれを受け止めるが足だけの炎の推進力では支えきれない威力。

地面が迫る。咄嗟の判断で剣を左横に流し、剣が地面を砕いた。

そして、高城さんに向けて炎を放つのと同時にその場から瞬時に離脱するが簡単に逃してくれるわけもなく炎の中から高城さんが飛び出す。


「逃がさない!」

完全に捉えた左脇腹に刃が食い込み、振り抜いた。勢いでビルに叩きつけ、埃を巻き上げている。しかし、あたりはしたが手応えが薄い。当たる瞬間に炎を噴射して体を流したのが見えた。

追撃を掛けたいが下手に視界不良なところに飛び込めばやられるのは私。

なら、遠距離から叩く!


剣が二つに割れて銃口が飛び出す。

かなりの威力あるレールガン。近くに黒田社長もいるから死ぬ事はない。

全力で勝ちに行こうと剣に魔力を込めた。

青白い光が放電し、甲高い音を鳴らして弾が放たれる。

しかし、着弾する瞬間に埃が飛散し、その神速の一撃を回避して上に向けて心が飛翔していく。


「逃した!」


「はぁ、はぁ。」

腹からの出血。初めて見る光弾。

光弾を受けたビルが崩れ去っていく。

当たれば致命傷どころの騒ぎではない。

本当にゲート・カーは訓練でも勝ちに来ている。

なら、こっちもそれに応えるのが筋なのかもしれない。


「……ふぅ。」

白い炎を確実に当てに行くつもりでやる。

だが、先にあの剣を先になんとかしなければいけない。

煙に紛れて、さっきは避けられたが次はそう上手く避けられる自信はない。

しかし、連続して撃ってこない所と剣から立つ煙からクールダウンがあるのか……。

なら、攻めるなら今!!


足と手の炎を全力で噴射し、加速する。

だが、高城さんの脚は地についている。

絶対に避けられる。


「はぁああ!!」


全力で振るった一撃は虚しく地面を砕く。

だが、その結果は分かりきっている。

音を頼りに次の高城さんの動きを予想し、そこに向けたカウンターの蹴りの一振り。

鈍い感触。確実に入った感覚。

脚の炎と手の炎で精一杯つけた推進力を持ったムチの様にしなる全力の蹴り。


「かはっ!!」


高城さんが吹き飛ばされて行くがそれを追う。白い炎を決めるならここだと拳に魔力を集めようとした。

しかし、銃口がコチラを向く。


しまっーー!


剣からまだ煙が出ている。

絶対にまだ打てないという油断。

魔力を全身に巡らせて防御耐性を取るが、一口に引き金が引かれない。

代わりに飛んできたのは剣そのものの一振り。


ブラフか……!


防御に魔力を回していたから致命傷は避けられた。しかし、衝撃までは防御しきれずに体制を崩す。

炎で体制を無理矢理立て直そうとするが瞬きの間に次の剣戟が頭上に迫る。


ガンッ!!


完璧に捉えたと思われた一振り。

しかし、心の腕にオレンジ色の魔力の盾が構築されている。

忘れていたわけではないがここまでの戦いで炎しか使ってこなかった。

無意識下でその絶対防御の魔法がある事を忘れさせられていた。

完全に受け止められ、心が拳を握る。

このまま、剣を握っていればやられてしまうと判断し、剣から手を離して両腕でカウンターの一撃を防御した。


「……ッ!」


両腕に焼けるような痛みが走る。

だが、やられていない。

指先までしっかりと感覚はあるし、動く。

空中に置いてある剣を蹴り、自分の手に引き寄せる。



「……くっ!」

上手い。

完全に剣を手放させたと思ったが気づけばしっかりと剣を握っている。

次の攻撃である回し蹴りは剣で完璧に防御された。

足に金属を蹴った感触だけが残っている。



***


会場は二人のS級の戦いに報道陣たちや実況者は大いに賑わっていた。

どこから現在の視聴率50%という数字すらも聞こえてくる。


「こりゃ、他の3人の戦いで結果がつきそうだ。」


「いいや、高城さんが心君を負かしてゲームセットだよ。」


「ないない。良くて引き分け。

僕の心が負けるわけないじゃない。

ただ、さっきも言ったけど試合の結果は他の3人だよ。この二人の戦いの決着はまだまだ、着きそうにない。

それだけの時間があればどこかの戦いが終わりの鐘を鳴らしている。」


「ならやはり、ウチの勝利は確実だ。

他の子達が今回のクローズワークスの参加者に負けるとは到底思えない。」


「ははは、さて、どうだろうね。」


視聴者も大体が一真と同じ感想だ。

SNSを見ても、S級の戦いは互角だが他の戦いはゲート・カーが勝つと言っている。

報道カメラがS級の戦いに一息入れようと画面に晶が映る。


「まだ、終わってないんだな。」

「凄いな。上のランク相手に……。」


周りからザワザワとそんな声が出る。

その少し、自分の社員が認められたような言葉に僕は笑みを溢した。

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