第50話

そのモンスターは黒いローブを着た体調は十メートルに迫るほどの巨人の骸骨。胸元には死してもなお自我を保ち生きていける全ての原動力である青く光る魔石。


「@#@&&&#/。」


口をカタカタと動かして、声にならない音で空気を揺らす。

しかし、私達にはその声はわからない。

ただ、そのモンスターは狩るべき存在でしかない。外にこのモンスター達を解き放てば多くの人が死んでしまう事は免れない。

それに、アンデットのボスに殺されれば操り人形になってしまうと言う。

だから、今回のゲートはゲート・カーに直接、閉じる事を命じられた。


「俺から行きますよ。

桜花!準備はできてるな!!」


「早くやってくださぁい。

集めるのってすごく疲れるんですよー。」


「わかったよ!」


火蓋さんが引き金を引いた。

鼓膜がツンざけるような音を響かせて、赤く燃える弾丸はボスの元へ飛来する。

そして、その炎の球はそこに集められた可燃性の物に触れ、オレンジ色の光が視界を覆い、十数メートルの爆炎を上げる。


「来ますよ!」


しかし、A級ゲートはそれだけではクリアできない。確実にボスの心臓部の魔石を砕かなければ終わらない。

目の前の爆炎が巻き起こる風に蹴散らされる。

爆炎の消えた地面からアンデットタイプのモンスター達が続々と出現する。


「背後からも敵が出現しています。

ゲート入り口にも数体の出現を確認。」


「わかりました。

これ以上敵が増える前に片付けましょう。

高城さん、準備はいいですね。」


ピチャッと音が鳴る。

そして、相手の足音ではもっと激しく、音が鳴っていた。

豪雨の後のような水溜まりが敵の足元に出来ている。


「はい、いつでも!」


私はそこに剣を刺し、電撃を加える。

青白く発光する蛇が波打つようなその光達はモンスターの足元から這い上って全身を巡り、モンスター達の動きが棒立ち状態で動きを止めた。


「光さん。足元はお気をつけて。」


ふと気がつくと水溜まりだった場所は一面青い花が咲き誇っている。


「行ってきます。」


私が花園に足を踏み出すと、モンスター達も痺れが治り始めたのだろう動きを始める。

しかし、地面から尖った岩が無数に出現し、モンスター達の頭を貫いていく。


「岩倉君。やっと出番ですね。」


「ここまで、空気だったんで人一倍仕事させていただきますよ!」


野太い声を発する一際体の大きい人。

そして、地面から岩の破片が岩倉さんの両手に集まり、大きな手を作り上げた。

魔力で強化された、圧倒的硬度を誇る腕。


「……ぉおおおお!!!」


私の目の前に新たに出現したゾンビの頭を瞬時に潰していく。

私がボスに向かう道が開けていく。

私は身体全体を電気の鎧を纏った。

身体強化と合わせての高速で地面を蹴り抜くと景色が次々に変わっていき、ボスに凄まじい勢いで近づいて行く。


「……危ないな。」


ふとそんな事を口ずさんだ。

何も考えれず、認知できずに両足を動かす信号を送っている。

なぜ、私はこんなにも足を早く動かせているのだろうと考えてしまう。

だから、この時間が圧縮されて行く感覚は助かる。

ボスが右腕を振り上げる瞬間さえもその手に魔力が集まって言ってあるのもわかる。

分からなかったら、ただ突進して行くだけの馬鹿だ。


来る!


ボスの攻撃範囲から出て行くために身体が右に大きく動くように魔力を操作する。

瞬時に体重移動を完了させて地を蹴った。

先程まで私がいた場所はコンマ数秒遅れて粉々に砕け散る。

そして、その破片が飛んでくるが目の前に岩の壁と木々の壁、それから水の壁が重なり合って出現する。


「おや、皆さんフォローが早くなりましたね。

社長としての立場を見せなくては!!」


一ノ瀬社長の右手に十数メートルの大きな水の塊ができて行く。そして、青い光を浴びて小さく指先ほどの大きさに圧縮される。


「隙を作ります。」


不適な笑みを浮かべて、その青く光る水の塊がボスの顔面の右半分を砕く。


「ついでにその新しい武器の性能も確認して来てください。我が社の新製品のプロモーションムービーに使いますのでド派手にお願いします。」


「わかりました。」

柄の先端にあるボタンを押した。

ガチャガチャっと音を立てて剣が二つに割れ、銃口が飛び出す。

使い方は事前にマニュアル書を読み込んだから大丈夫。


ボスは大きく仰反り、なんとかゾンビ達の肉の壁を作り上げるがそれは岩と水と炎と木片の弾丸が打ち崩していく。

私はその隙に飛び上がり、ボスの核へと足をつく。このまま、剣で砕いてもいいが社長命令だ。

剣に魔力を電気を蓄積させる。

青白く電気を浴びる剣。


「……ふん!」


私の渾身の電撃を剣に打ち込むと、爆発にも似た音を響かせて、中に入っていた弾丸がボスの魔石を貫いた。

そのまま、その弾丸は隕石が落ちたかのような数メートルのクレーターを電撃と共に刻む。


「ばっちりです。」


魔力を原動力とした特殊なカメラをいつのまにか構えていた社長が親指を立てている。


「それは、よかったです。」


ピキピキッとそんな音が鼓膜を揺らす。

小さな穴は大きなひび割れを起こし、骸骨の肉体と共に私の足元から崩れ去って行った。

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