第41話

魔力で身体能力を強化してあるとはいえ、生身で刃を受けて無傷。

挙げ句の果てには皮膚は火花が散るほどの硬度。

世界中でハンターを探したところで小豆畑さん以上の身体強化魔法を扱える人がいるのか。それにこの巨大化する特異な魔法。

剣持っている俺より攻撃のリーチが長い。

それに巨大化でジャケット無しの裸なのに防御力はジャケットありの時よりも高い。


打ち出される拳は爆発したかのような音を響かせて地面に大穴を開ける。

この最高級の硬度で作られた部屋に穴が空いて下の階層まで繋がってしまうのでは無いかと心配になる一撃。

しかし、そんな事を心配している場合ではない。

その拳を俺が喰らうと思ったらゾッとする。

当たれば怪我どころの話ではない。

距離をとって俺のフィールドにするしかない。

背後に大きく飛ぶ。


「逃すかよ!」


その巨大でどんだけ速く動くんだよ!

化け物め!


大地に向けて魔力を流し込み、厚さ1メートル以上はある大地の壁を作り上げる。

最大魔力出力量を上げられてよかった。

これなら、少しは時間が……


「薄氷かよ!

こんなんで俺を止められるかぁぁあ!!」


一撃で破ってくんな!

鋼鉄より硬くなるよう魔力を込めたぞ!


「おら!その2本の剣で防いでみろ!!」


打ち出される拳に対して、2本の剣で防ぐ。

しかし、ガラスが割れるかのような音を響かせて目の前で粉々に砕かれる。

だが、拳の勢いは死んでいない。


「……ぐはっ!?」


腹部に集中した身体強化魔法を掛けた。

にも関わらず腹に風穴が空いたのではと錯覚するほどの衝撃。

だが、その衝撃を利用して大きく吹き飛ばされ、腰にある筒を手に取る。

カチッと音がすると瞬時に弓の形を形成。

右手に弓矢を生成。


「これなら!!」


腕で斬りかかるよりずっと威力はある。

これで無傷なら俺はこの人に一つも傷をつけられないことになる。


「効くか、ボケェエエ!!」


素手でキャッチされて、両手で持ち、膝で折られる。

動体視力がどうかしている。

身体強化を維持して、どれだけ目玉を強化したらそんな離れ業ができるのか。

しかし、キャッチしたということは当たればもしかしたらと連射する。


「ふん!!」


筋肉が膨れ上がる。

血管が浮き出るほどに力をこめている。

そして、火花を散らして弓矢が撃ち落とされていく。


「効かないのかよ!

なんで、さっきはキャッチした!」


「俺の動体視力自慢だ!!」


「ですよね!!」

弓矢の速度ではこの人に当たらない。

弓矢ではこの人の硬度を貫けない。

どうしたらいい!!


「戦いの最中に考え事か!!」


一気に距離を詰められ、対処しきれずに弓が蹴り上げられる。

弓を目で追っていく余裕はない。

すぐに剣を作り上げる。


「そんな!砂鉄で使って強化したくらいの剣で俺に勝てるわけないだろ!!」


再び作り上げた剣も簡単に砕かれる。

小豆畑さんに傷一つだってつけられていない。


俺にはこの人に勝るところは一つもないのか?


「いいこと教えてやる!

お前は自分の魔法を使えているつもりで使えてない。なぜ、他を頼ってばかりいる!

お前の魔法はそんなものではない!!」


「なにを言っているんですか……。」


「気づいているか?

心は魔法で炎を作る。

一ノ瀬さんは魔法で水を作る。

高城光は魔法で電気を作る。

だが、お前は操るばかりでほとんど作らない。それはなぜだ。」


「なぜって俺の魔法は鉱物を操る……」


「本当にか?

お前は自分が作り出している物をしっかりと見たことないのか。

お前の剣と弓矢に純粋なお前の魔力を帯びた鉱物が混じっているのは俺の錯覚か?」


「はぁ?」


「作って見てみろ。」


そう言われて剣を作り出す。

しかし、どれだけ目がひん剥ける程除いても黒一色の剣。


「天井の光に当ててみろ。」

「……あ。」


僅かに青く光る石。

黒一色の中に散りばめられ青い石。

確かに存在している。


「お前は自分が理想とする鉱物を作れる。

それこそ、俺を貫ける程の剣を矢を作り上げられるはずだ。集中しろ。傑。」


「……--すぅぅ。」

目を閉じた。意識したことはない。

鉱物を作り上げるなどできるのか。

しかし、目の前に作り上げたものが実在する。


「お前の中にあるはずだ。

お前の理想の好物が。

お前の意志が形のなったものが。」


どうやったらいいのかはわからない。

だが、なんとなく心の底から頭の中からそれをするための感覚が血管を神経を通して魔力が掌で固まって重みを帯びた。


「できたな。」

「……はい。」


掌サイズの青い石。

モンスターから取れる魔石のような鉱石。

しかし、その魔石から感じる魔力は俺の物。

頭の中で形とする物を剣を想像した。

すると瞬きの瞬間にそれは三、四十センチ程の短剣に姿を変えた。

刀身から柄まで透き通った青色の光を放つ剣。

ただ、それひとつ作り上げるだけでゾッとするほど魔力が持ってかれた。


「まだ、行けるな。」

「はい!」


この感覚は忘れてはいけない。

体に染み込ませて、初めての完成だ。

一度たまたま作れただけでは意味がない。

それに、本来の唐突に起きる戦いでは意識をして作っている暇などない。

一瞬で作り上げる速度がいる。

戦闘中に作れるだけの速度。

後、1、2本は作れるはずだ。

次は戦闘の中で。

そして、この鉱石の特性を見極める。


「行きます!」

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