第32話
「……イッタ。」
吸収率は晶を遥かに凌ぐな。
8割くらいは持っていかれたか。
口元に水が溢れる感じがした。
拭ってみるとそれは赤い水。
それがとめどなく流れ出る。
鼻が折られたか。
まあ、回復できるけどさ。
痛みは一瞬で消える。
「回復魔法使えるんだね。
それに、かなりの速度だ。やるね。」
「貴方ほど速くないですよ。」
「まあね。」
還元率もそれなりだな。
吸収した魔力を自己強化にほとんど転じている。それに、晶みたいに魔力が逃げない。
持久戦はこちらが不利か。
やるなら短期決戦。
攻撃しようが防御しようが魔力は取られる。
攻撃ならどれほどまでの威力なら吸収できる奴なのか試したいが3人の魔力が妙な動きをしている。そんな余裕は無い。
「悪いんだけどさ、次の一撃で最後だ。
君となら来世でもう一度会いたいよ。」
「勝ったつもりになるのは早いんじゃない……!」
「見せてあげるよ。
この地上に存在する魔法の全てを込めた一撃って奴をさ。
炎に水に土に空に雷の属性があるものってどうなるか想像できる?
できないと思うでしょでも、君は今その全てが存在する大地に足をつけている。」
青い光の玉。
さっきの指先の大きさではない。
ずっと大きい、かなりの大きさだ。
そして、無理矢理一つにまとめられた魔法同士が衝突し、五色の火花を散らしている。
「大地を下地に炎と水と雷が入り混じり、全てを纏める為に覆った空間の層。
綺麗でしょ。まるで地球みたい。
故に、この魔法の名前は……【世界】」
抑えきれなくなり始め、膨大なエネルギーが膨張を始める。
散る火花の範囲が広がって近くにいるだけで身を切り刻む。
これは触れることすら許さない魔法だ。
とてもじゃないが喰らうなんて事はできない。
避けるしかない。
しかし、どこへ逃げたら良い。
僕の移動速度では……。
ああ、無理だ。
アルを飲み込んだ世界は上空へと飛んでいく。そして、雲に届いた時、辺り一面の雲一切を吹き飛ばす威力で弾け飛んだ。
「よし終わった……。
とは、言え無さそうだね。
早いな、お前。」
ビルの上にいるロン毛の男。
もう1人の男が当たる瞬間に尋常じゃない速度で抱えていくのが見えた。
「お前が街を壊さないように上空に打ち上げるという気を遣ったおかげだよ。
本来の速度ならこの子は見捨ててたさ。」
「はぁ、今日は気は使わないほうがいい日だな。つくづく悪い方に行く。」
「そのまま、気を遣っていてくれ。
今度、会う時も同じくな。」
「逃さないよ!」
ソイツがいるビルの上まで一蹴りで辿り着く。
コイツはアルと一緒にしてはいけない。
気を抜いたらやられるのはこっちだろう。
最初から全力でやる。
脚に龍衝を纏った蹴りが男の顔面に向かう。
だが、男は腕で受けた。
「飛べよ。」
僅かな抵抗力を押し切り、振り抜いた。
ビル20階建てのの屋上から地上に向けて一直線に落ちていく。
これで死んだと思いたいがそうもいかない。
言動からアルのこの強さで下の奴だ。
となれば上の奴があの程度で死ぬ訳がない。
「エシーさん!」
「へぇ、彼はエシーって言うのか。
ありがとう。殺す相手の名前くらいは知っておきた勝ったんだ。」
だが、アイツの魔法は何か知らないがアルよりかはやり易い。
魔法の王が魔法を吸収する魔法を使う奴に相手取るのはめんどくさい。
同じ魔法は同じ魔法でやり合ってもらいたいね。
『そろそろ起きてよ。晶。』
何も聞こえない暗闇の中で先生の声が聞こえた気がした。
『彼奴ら、やはり目覚めていたか。」
それとは違う別の声。
野太い、年寄りの声が反響する。
『懐かしい魔力だな。』
年寄りの声。
しかし、声音も口調もさっきまでの人とは違う。若い人の雑な口調。
『そろそろ@#/&/_#……--。」
二つの声が混ざり合って何を言っているのかわからないノイズみたいな音が耳に届く。
眠たいのに頭の中で声が響き続ける。
『生命力を強化しろ。そして、@#/&_』
『喰らえば全て解決する。』
強化……喰らう……?
頭の整理が回らない。
ただ、今それをすべき事なのだろう。
黒田先生も起きろと言っていた。
そうすれば起きられるのだろうか。
喰らえる魔力。
体の中に別の人の魔力がある。
それを自分の魔力に取り込め。
……--ドクンッ!
全然聞こえなくなっていた心臓の音が脈打つのが聞こえた。
押し出された血液が身体中を巡っていく感じがする。
頭が目覚めていく感じがした。
それと同時に頭の中に何重にも見える鎖の檻が見えた。
その中の一本の鎖が一つ弾ける音。
……この力の使い方がわかる。
記憶が流れ込む。
力の使い方が段々とわかり始める。
それでも、まだ一部だ。
しかし、これ以上は今はわからない。
「起きたよ、先生。」
刀を拾って近くに倒れていた四谷と新垣の中にあった2人とは別の魔力を吸い出す。
これで時期に2人とも起きるはずだ。
「今なら少しは役に立てそうな気がする。」
吸い取った力が逃げない。
しっかりと体に馴染んで離れない。
それでも、溜めておける時間はあるが1時間、2時間は離れないと思う。
でも、今なら多少なりでも黒田先生の力に慣れそうな気がした
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