第12話
ハンター協会本部。
日本で確認された全てのゲートの場所や出現したモンスター、その素材。
そして、クリアされた時の情報データが全て詰まった場所。
今日も確認されたモンスターの死体からさまざまな情報が解析されている。
そして、また『上原課長へ』とモンスターの死骸とゲートの情報がメールで送られてくる。
ファイルを開き、いつも通り情報を見ていくと一枚の写真データのモンスターの傷に目が止まった。
モンスターはこのゲートのボスの死骸だった。
「
龍衝の直撃を受けた部分は綺麗になくなり、その周りを電流が走ったかのような跡。
それが、龍衝でやられた跡だ。
龍衝…
それは膨大な魔力を一点に集中させ、魔力そのものの破壊力を極限にまで上げた絶大な攻撃力を持ったせる攻撃手法だ。
その技がこの世で初めて完成されたのは20年前、初めてゲートから龍を確認された時。
龍の鱗はどんな攻撃も通さなかったがこの一撃はその鱗を破り、龍を衝いた事から名がつけられ龍殺しの技と知られている。
しかし、龍衝を習得しているのは高ランクのハンターにも極僅かしかいない。
「しかし、確認されたゲートがE級とはな。
これほどの使い手が何故、こんな低級に……。」
龍衝が使えるのなら攻撃力だけなら、A級以上のゲートには通用するレベルだ。
それに龍衝が使えるほどの魔力の持ち主。
何者だ……。
ボスにトドメを刺した者の名前を見た。
名前は【
C級?いや、このゲートクリア後の再検査でB級に昇級している。
最近の経歴では4人をゲート内で死なせてしまった事で一ヶ月の活動停止。
どこの所属だ?
ふと、所属欄を見ると笑いが込み上げて来てクスッと笑う。
「また、あの会社か……。」
25歳にして日本最強のハンター【
そこの人材発掘部門の所属とはな…。
強い訳だと納得して、次の仕事に移った。
***
「ハハハハハハハハ!!!」
おもしろい!
なんなんだ、この力!
クローズワークス本部の一番上に存在する代表取締役専用の部屋。
その一室で高々と笑い声が響く。
笑いの原因であるその映像をもう何度も見返している。
何十回と見た映像なのに見る度にワクワクして笑いが込み上げてくる。
今まで、数多くのハンターの力を見て来た。
だが、相手の魔力を吸収する魔法など見たことがなかった。
映像が終わる。
しかし、見終わると巻き戻す。
何度も繰り返した作業。
全てを吸い込むかのような漆黒の目。
しかし、目に魔力を集めると瞬きをした次の瞬間には青空、青海を思わせる青い瞳に変わり映像に映る一人の男を捉える。
筋肉の動かし方。
身体強化に使われる魔力の動き。
それはわかる。
しかし、相手の魔力を吸収するその瞬間は僕の魔眼を持ってしてもどのような事が起きているのかわからなかった。
黒田修司の目は見た相手の筋肉の動き、魔力の動き、魔法を完全に解析する。
そして、それを完璧に模倣し同じ魔法を使用することができ、相手以上の魔法に仕立て上げる事も可能であり、それを可能にする為の絶対的な魔力量を保有している魔法の天才。
一部では魔法の王とさえ言われているがその力をもってしても霜崎晶の力を解析できずにいた。
今まで、見た相手の完成形を想像するのは対して難しくなった。
同じ炎を扱う魔法使いがいても千差万別の成長を表してくれるが僕の目にはどうなるか予想できてしまう。
しかし、気に入った相手の魔法を解析してその完成された魔法にするためにその人に教えるのは楽しかった。
それがこれまでの僕の楽しみだった。
でも、今生まれて初めて僕が想像できない力を目にして胸の鼓動が大きく早く脈打つのを感じる。
もっと、彼を近くで見たい。
肉眼で一度だけ見た、あの時の高揚感はいまだ消えずにいた。
映像ではなく何度もこの肉眼で本物の彼を見たかった。
「あーーーー、これは恋だ!
寝ても覚めても、霜崎晶!!
君の事が頭から離れない!!
晶!君に会いたい!!君が恋しい!!
なぜ、君は僕の会社にまだいない!
君に触れたい!
君の成長を君の進化の軌跡を君の物語をずっと見ていたい!
晶、晶、晶、晶、晶!!!!」
写真を見るだけでこの胸が張り裂けそうだった。
そして、この子の未知の可能性、完成形を想像するだけで頭がおかしくなりそうだった。
顔つき、体付き、魔力、魔法。
この子がどのように成長していくのか気になって仕方がなかった。
「道門、君はやはり僕が認めた天才だ。
君の人を見抜く目は素晴らしい。
それに龍衝まで身につけて最高だ!!」
道門にメールで霜崎晶を連れて【クローズワークス】のBチームに合流しろと送信した。
本当はすぐにでも僕の隣でAチームとして戦ってほしいが素の力が足りていない。
このままではA級ゲートに行ってもすぐに死んでしまう。
僕がいれば絶対に守り通せるが僕は晶の戦う姿が見たい。
そして、彼と肩を並べて戦いたかった。
彼が【クローズワークス】に入社したら僕が是非とも鍛えたい。
トレーニングメニューも全て管理したい。
彼の食生活も。
彼が最高のコンディションで戦えるようにする為なら僕はなんだってする。
僕の睡眠時間なんてなくたっていい。
僕は食事なんてとらなくていい。
彼のことをずっと考えていたい。
「あー、早く来てくれ!霜崎晶くん!!」
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