第2話

 ゆいしょただしきいぬかいびとねんいちほしまつりをはるかむかしよりつかさどる。

 てんよりまれちるげんようけんそだて、しんしんたくましいせいけんとしててんかえす。

 よくれたなつよるはじまり、よくれたなつよるわる、このしきをもってたなばたくにちいさいながらもあんたいたもっている。

 しきようせい退しりぞけるのに、じゅうじゅんかつじゅんすいよわいげんようけんがうってつけだったのだ。

おれだってもうできるんだ!」

 いぬかいびとのいろはをまなんだアルタイルには、わかっていた。

 いちぞくつとめをたせれば、ゆえにつめたいあつかいをけることはなくなるだろう、と。

 アルタイルもじゅうさんさい大人おとなたちにじってあせみずながしてもいいとしごろだ。

 ぞくちょうとて、ひろったどもの使つかいどころをあやまるつもりはない。

 だが、ねんがあった。

「アルタイル、がたこなきのむすのルースターがほおをらしていた。ゆうべはきずひとつなかったとくが……」

「せせらぎでかおあらっているときにいしげられたので、ぶんなぐってやりました」

やくのミュールがどろだらけでわめいていた、おとといのけんもおまえだったな?」

おれくろかみきたないと、げんようならえとわらったんです。でも、こえだめにはとさなかった」

せんしゅうにいたっては、むすめのアーミンをかしただろう」

「それは」アルタイルはくちごもる。「……やめろとってるのに、ことあるごとにとばかにするから……」

 このとおり、アルタイルはあばれんぼうだった。

 おやなしだろうとつよくありたい。そのおもいひとつでここまでらんぼうそだってしまったのである。

 こんなしょうねんいぬかいびとたしてつとまるのか。ぞくちょうあんぬぐえない。

 しかし、できる、できます、とアルタイルにられ、とうとうぞくちょうもうなずかざるをえなくなった。

「あいわかった、わかった! まあ、ゆくゆくはやらせるつもりだったのだ」

 なにも、やぶれかぶれではない。ぞくちょうげんほんしんだった。

 アルタイルはりっいぬかいびととなって、いちぞくにんげんみとめられたい。

 ぞくちょういぬかいびとひとそくおぎないつつ、あわよくばもんだいかせたい。

 しょうねんそうはんして、りょうしゃがいはおおよそいっしていたのである。


 アルタイルのじかだんぱんから、ふたつのつきながれた。よいほしまつりである。

 たなばたくには、ツタにはなげっこうにかがりにと、いろどられた。

 こくおうミルキーウェイななせいせまいおしろも、らんらんまどかがやかし、ようせいがくだんによるえんそうをかんかんあおてんじょうひびかせている。

 にんげんようせいも、みな、にぎやかにんでべて、かたらって。

 そうして、ときどきぞらゆびさしながら、としはあれがるだろう、あっちのほうがひかってないか、とようぼうたるあやしげなまたたきをちわびるのである。

 ほしまつりもたけなわのときをむかえ、そのしゅんかんがやってきた。

 あやしげなまたたきからぽつり、ぽつり、おおきく、ちいさく、みゃくひかりはじめるや、それらはいとらすがごとくひとすじえがいてながれていく。

 ひとつはやまち、ひとつはたにち、ひとつはみずうみち、そのたびにたなばたくにかんせいげる。

「ようやくだ……!」

 れいねんのようにしかあつかってくれないだろういぬかいびといちぞくけて、ほしまつりをわたせるおどろススキのおかあおけにそべっていたアルタイルにも、えていた。

 じゅうさんさいしょうねんきる。

いちばんぼしも、ばんほしだってくれてやる。ちかくにちたやつだけは、ぜったいおれそだてるんだ」

 そんなみを、どうやらてんはおもしろがったらしい。

 すっと――アルタイルのかいはしがひらめく。

 あまつぶのこぼれるおとよりおとなしく、あやしげなまたたきがススキのなかもぐっていった。

 てんよりまれちるげんようけんは、それをさいしょにしたいぬかいびとにのみそだてることがゆるされる。

 だから、アルタイルはえんりょなく、かぜあおざめるススキをずんずんけた。

 うるさいぐらいのどうわせて、なんじゅっあしはたらかせ、ものしそうにあつまりだしていたむさぼるくちばしのようせいたちをゆみばし、ひかりえたさきへとたどりく。

 もとからたおれ、かさなったススキのいっかくからアルタイルがげたのは、いぬのようなようせいだった。

「ようやく、おれいぬかいびとだ……!」

 りょういっぱいにうずくまる、あたたかなようたい

 しょうねんゆびさきよりみじかい、なめらかなぎんたいもう

 まぶたをざしたげんようけんをひとて、こいつはだ、とアルタイルはさっする。

「じゃあ……じゃあ、ベガにしよう。おまえまえはベガだ」

 げれば、ほしそそぜっけいあり。

 けれど、ひとりといっぴきは、たがいにゆめつづけていた。

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