大いなる災い(1) 巨人の王、しす

1、ルシーナ、しがんする


 ルシーナの対応は、素早かった。

 『アルフェロン同盟』の首領たちに伝令を飛ばし、緊急の報告会を提案する。

 もちろん、新生アルス政府にも情報を伝えて警告。

 伝令がもどるより早く、カバリオ隊長を伴って出発。『丘の街』に入り、領主の館へ一直線。

 一刻ほどで、兵舎にもどってきた。


 ごおう・・・ガタガタガタ・・・。

 ごおおお・・・おおおお・・・。


 荒れ狂う風。

 叩きつける吹雪。

 ルシーナはフードつきの外套(がいとう)を手で巻き付けるようにして、兵舎に転がり込んできた。

 鬼神が娘を迎え、黒い鋳鉄のストーブのそばへ。

 後ろからカバリオ隊長も入って来て、扉を閉める。

 2人に続いて、ピンクのダークエルフの女軍人も部屋に入ってきた。

「鬼神さま。初めまして。フレイミニア隊長です。

 ──参謀閣下。カバリオ隊長。テント村の者どもの避難ですが」

「うむ。いかがですかに?」

「仮庁舎、兵舎、市内の宿への割り当ては決まりました。

 そやけど、吹雪が厳しく、移動が遅れとります」

「では、カバリオ隊長」

「わかった。ほな、やりましょか。

 フレイミニア隊長。うちの隊員、全員そっちに預けますわ。こき使うたってください」

「え? カバリオ隊長は?」

「俺は出撃や」

「しゅつげき・・・」

「神竜との戦いに志願をしたのえ」

 ルシーナが説明した。

「カバリオ隊長と、私。

 この2名は、あと半刻ほどで、神竜戦に出撃をする」

 

「・・・どういうことじゃ?」

 鬼神。

 フレイミニア隊長とカバリオ隊長が出てゆき、ルシーナと2人きりになると、訊いた。

 兵舎で待っておったため、報告会で何があったのか、全然わからんのである。

「はい」

 ルシーナは扉の外を確認し、しっかりカギを掛けた。

 ストーブのそばにもどってきた。

 外套を脱ぐ。

 ふわーっと部屋が明るくなった。

 ルシーナが、その肌が、白く輝いとるんである。

 ふだんは隠して見せておらぬ、神威(しんい)であった。鬼神しか居らんので、隠すのをやめたらしい。

 神々しいとしか言いようのない美貌で、父の鬼神を見つめる。

「報告会にて、巨人の国より、援軍の要請がありました。

 ルーン魔術師、マナ招集のできるもの、治療師の3種について、援軍が欲しいと。

 私は、マナ招集ということで、志願をしました」

「まなしょうしゅうだと」

「ルーン魔術師が大きな呪文を唱えるための、補給係といったところですえ」

「はあ」

「私は、月の巫女の祝詞、修めておりますに」

「なんじゃ。初耳だが」

「巫女の領分ゆえ、あまり声高に(こわだかに)言うことでもなく」

「むむ・・・」

「カバリオ隊長は、私が行くと言うたら、志願をしました。

 イリスには怒られそうやが・・・」

「そうか・・・」

 

 ガタガタガタ。

 窓の鎧戸(よろいど)が、吹雪に揺れる。

 腹の底から殴られるような、暗く重たい雪嵐である。


「私としては、」と鬼神。「そなたには、安全なところに居ってほしいのだが」

「二度は申しませぬ」

 ルシーナは首を振った。

 アルスを守る。逃げる気はない。──というのは、すでに宣言したところである。

「せめて、私が一緒に行けたらのう」

「妙雅に『お断りいたします』と、正式に拒否されておりまする」

 

 鬼神は当然、自分も戦うと申し出た。

 ところが、巨人の国は『お断りする』と返答してきたのであった。

 妙雅が言うには、巨人の王が首を縦に振らぬ、とのことであった。


「身から出た錆(さび)ということか」

 鬼神。

 ルシーナの肩に、手を置いた。

「こんな、情けない父にくらべて・・・。

 おまえは、おとなになったのう。ルシーナ」

「子供扱いをすな」

「しとらんがな。おとなになったなと言うたのだ」

「それが子供扱いですえ」

「しょうがないのだ。親というものは、子供がいつまでも可愛くて、心配なのは」

「子離れしなされ」

「はいはい。わかったわかった」

 鬼神はルシーナの隣、床の上に、どっかと座った。

 ぱちぱち。

 ストーブの中で、薪が弾ける音がする。

 その心地よい音も、吹雪の前には、心細い。

「・・・。」

 ルシーナも、鬼神の隣に、おんなじように胡座かいて座った。

 ゆーら、ゆーら。

 火に照らされた、鬼神の影。背後の壁で、踊っておる。

 ちらほら。

 ルシーナの小さな影も、一緒に踊っておる。

「・・・それで、いつ出るのだ?」

「昼前には出ることになるでしょう。昼というても、空暗く、ようわかりませぬが」

「そうか・・・」

「時間が来たら、妙雅から連絡が来るようになっておりまする」

 ルシーナは荷物袋から、黒い物体を取り出した。

 9本の筒束ねたみたいな、けったいな物体である。

「小っちゃい妙雅」

「オクトラですえ」

 ルシーナ。

 オクトラを、お腹に抱えた。

 子を抱いて温めてやっとるような形である。

「ま、どっちみち。

 イリスが戻らぬことには、きしにぃが空きませぬ」

「イリスは・・・ルーンお嬢さんと一緒だったか」

「ルーン司令官」

「あいすまぬ。ルーン司令官閣下と同行しとるんだったな」

「はい。

 ハルの遠征団出発の、見送りで。

 湖の水軍基地まで、一緒に下りてゆきました。

 その足で巨人の国へ飛ぶと言うておりましたに・・・この吹雪では」

「氷になってしまうわな。飛ばしすぎたら」

「はい。

 きしにぃはともかく、イリスは。

 まあ、あれは寒さに強い女やけれども」

「相棒も『寒いもんは寒い』みたいなこと言うとったしのう」

「へえ? きしにぃが」

「うむ。

 なんとなくだがな。たぶん、あいつ、寒いのは苦手だぞ。

 ちょっと暑いぐらいのとき、いちばん気持ち良さそうに飛んでおる」

「寒がりのきしにぃ」

 ルシーナ、けらけら笑う。

 と、そこで。

 オクトラから、妙なる(たえなる)声がした。

<・・・こちら妙雅。こちら妙雅。ルシーナさま。いらっしゃいますか?>

「こちらルシーナ。なにかに?」

<ルーン司令官閣下から連絡です>


2、ルーン司令官、変な男の話をする


<──もしもし。こちらルーン>

「ルシーナやえ。いま、父上が隣に居る」

<え、鬼神さま?>

「やあ。ルーンおじょ──司令官閣下。お元気かな」

<はい! 御令嬢のみなさんのおかげで、元気にやらせてもろてます。

 神竜のこと、情報、ありがとうございます>

「うむ」

「で、ルーン。なにえ?」

<2つあんねん>

「なにえ。2つ」

<ひとつめは、『なんであんたが出撃すんねんだいたい私に相談せえや』ちゅう話ね。

 ふたつめは、なんか変なおっさんがさっき私のとこに来た話。

 どっちからしたい?>

「ふたつめ」

<こっちでも、ほこら造っとったんやけどね>

「ああ。グレイスの姉者のほこらか」


 神剣“グレイス”。

 ルーン司令官の手にあって、大いに活躍をした、あの剣の形した女神である。

 その後、実家である太陽の女神の御許(みもと)へと、御帰還をなさった。

 ルーンは、この女神グレイスの司祭見習いである。

 帰還の際に、グレイス直々に『私の司祭になれ』と、指名をされたんである。

 以来、どっか行くたびに、礼拝所だのほこらだの造らされる羽目になっておる。


<まことに光栄なことに、そういうわけよ。

 吹雪で動かれへんし。

 参謀閣下が『出撃する』とか抜かしよるから、お祈りもしたかったしねえ!>

「まことに光栄なことやえ」

<その、ほこら造っとる最中にね。

 男の人が入って来てね。声掛けられたんよ>

「口説きか? 殺せ」

<あほ。

 ほんでね、その男の人が言うわけよ。

 『司令官どの。剣はどうなさったのかな?』って。

 グレ姉のことは一応秘密やから、誤魔化したらね。

 『剣の力をたのむというわけだ?』言うて、なーんか怒った顔しよんねん>

「意味がわからぬ」

<うちも、なんや変なおっさんに絡まれたわー思うたけどね。

 いまやグレイスさまの司祭見習いやん? どこでどんな噂立つかわからへんやん?

 それで、丁寧に説明したわけよ。

 神さまに甘えるつもりはない。

 アルスの国は、うちらの手で守ります、って。

 でも、ずっと一緒に居るつもりで、こうして報告するんです──っちゅうてね>

「ふん」

 ルシーナ、ちょっと横向く。

 鬼神と目が合うた。ルシーナ、反対向く。

<ほしたらその男の人が機嫌良うなってね。

 『君の神さまのことは気に喰わぬ。

  だが、君のことは気に入ってしまったよ。

  これでは、贈り物をやるしかないではないか』とか言い出して、>

「やはり口説きやに。殺せ殺せ」

<はいはい。ちょっと黙っとってな?

 『さあどうぞ』言うて、手ぇ出してくんねんけど、なんも持ってへんわけ>

「頭おかしいえ」

<うん・・・そやけど、なんか・・・もろたような気がするんよ。

 なんか・・・ようわからへんけど>

「断るべきやったに」

<かなあ?

 けど、なんか、自然な感じやってん。受け取るほうが>

「相手はなんか要求してきたのかに?」

<グレイスさまに伝言してくれって。

 『君の女神に、このことを伝えておいてくれ。これで許してくれと』。

 ええ? ってなって、一瞬ほこら見て、振り向いたらね。

 もう誰も居らへんかったんよ>

「一瞬で、居らんようになったんかに?」

<うん。

 被害はないねん。なんも盗られてへんのは確認した。

 けど、誰もその男を見てへんねん。うち以外>

「神かなんかかに?」

<さあねえ・・・>

 コンコン。ノックの音。

「なにえ」

「カバリオ隊長です」

「ああ」

 ルシーナ、扉開け、カバリオ隊長を入れる。

「やることは済ませたか?」

「まあ、独身やからね」

「ちょうどえええ。いまルーンと繋がっておる。なんかしゃべれ」

<ほんまや。ちょうどええわ。話があります>

「あ、俺、用事思い出しました」

「後にせよ」

 ルシーナ、逃げようとしたカバリオ隊長を捕まえる。

 ルーンのお小言が始まった。

<あのねえ。2人とも。

 なんで私に相談もせんと、突然『志願する』とか決めるん?>

「ルシーナさま1人で行かせたら、アルス軍の恥ですわ」

「あ。こら。カバリオ。私のせいにすな」

<ルシーナ。1人で決めて1人で動かんとってて話したやん>

「うむ。

 その話は、ちゃんと心に留めておる。

 そやに・・・これを決めたのは、ずっと前の話ゆえ」

<そうなん?>

「決めたのは、水軍基地襲撃で、妙雅に乗り込んだ日」

<猿の神の戦いの日?>

「そえ。

 打診は、さらに前。洞窟マンションの資材運搬をしておったころ」

<そんな前から、神竜の話があったん?>

「いや。

 初めは、『巨人の国と同盟ができれば』という思惑であった。

 妙雅に打診をし、色々と話をするうち、神竜の話となったのえ」

<ルシーナ>

 ルーンは言葉を切った。

<うち、あんたを手札にしたくないねん。

 私やカバリオ隊長は、手札でええわ。もともとアルスの国民やから。

 けど、あんたは──>

「私も一緒にしてほしいのえ」ルシーナはさえぎった。「アカンかに?」

 ぱちぱちぱち・・・。

 ストーブの音がする。

<ルシーナ。いまから命令変更する気ある?>

「ない」

<・・・。>

「いま現在、留守番部隊の指揮権は、このルシーナにある。

 そなたが私に代行を命じたはず」

<うん。出て行くときに命じたわ>

「その指揮権にて、私は、私とカバリオ隊長の志願を認めた。変更はせぬ」

<そうか。わかった>

 ルーンが深呼吸する音がした。

<──ほな、ルシーナ代行。カバリオ隊長。

 ふたりの武運を祈ります。

 巨人軍を助け、神竜を討ち。

 以て(もって)、我らがアルスを守られよ!>

「はい」「は! 隊長!」

 ルシーナ、カバリオ隊長、オクトラに敬礼する。

「・・・隊長ちゃうえ」

「やってもーた。こんなときに」

<ええよもうw 隊長で>


 コンコンコン。扉にノック。


「なにえ」

「フレイミニアです。イリスさまが御帰還なさいました」

「はいな」ルシーナ、扉開ける。

「姉者、お待たせ!」

 真っ白けになった背の高い娘が入って来た。

 鬼神の三女、イリスであった。

「めっっっちゃ寒いえ! 服凍ってしもた!

 ・・・あれ? 父上。なんで居るん?

 あ、わかったえ! 水鏡(みかがみ)!」

 イリス。

 床に座っとる鬼神をべしべし叩いた。

「あいた。こりゃ。イリス」と鬼神。「なんで叩くのだ」

「あれ? 本物や」

「うむ」

 鬼神。

 末っ子の明るい振る舞いに、思わず笑う。

「神竜のことでな。私も、急いで追っかけてきたのだ」

「そうなんや!」イリス、にっこり。「父上居ってくれたら、心強いえ」

「そうか、そうか」

 楽しそうな2人。

 ルシーナはちょっとさびしそうにそれを見る。

 で、カバリオ隊長を見る。

「ほな、行くえ」

「え?」とイリス。「どこ行くん? 外、吹雪やに」

「私とカバリオ隊長は、アルス軍の援軍として、神竜戦に出撃する」

「・・・は?」

 イリス、真顔になる。

「ルーンの命令?」

<声が恐いってイリス>とルーン。<私やない。ルシーナさまの命令よ>

「うむ」

 ルシーナは背を伸ばし、外套着る。

「司令官代行、ルシーナの命令やえ。

 ルシーナ参謀とカバリオ隊長の志願を認め、出撃を命じる。

 イリス。

 そなたは現在、アルス軍の指揮下にない。 

 が、姉として、また親アルス派の諸侯のよしみで、頼みたい。

 ──後のこと、よろしゅう」

「え、ちょっと、姉者」

 イリス戸惑う。

 ルシーナはそんなイリスに背を向け、オクトラを見た。

「ルーン」

<はいな>

「万が一のときには、私の司祭になれ」

<は?>

「私も女神やに」

<・・・うん。そうやけど>

「そやに、そなたは、グレ姉だけ女神扱いし、私はせぬ」

<はい? あんたもしかして、嫉妬しとるん?>

「しておらぬ。事実。私も女神」

<さっき『私も国民』言うたやん>

「うるさいえ。

 とにかく、万が一のときには、責任取って私の司祭──」

<いやや>

「む・・・」

<軍人が負けたときの保険打つとか、あほか。

 勝って帰って来ぃ。そしたら、なんでも言うこと聞いたげる>

「よし。

 ──では父上、行って参りまする」

「ルシーナ」

 鬼神。

 ぐずぐずと言いたいことが、いっぱいあった。

 だが、戦の勘で、それはいかんと直観をした。

 それだから、こう言うた。

「勝つぞ」

「はい」


 この日。

 夕方。

 神竜は、アルフェロンに姿を現わしたのであった。


3、神竜、きたる


 午後になって、突然、空が晴れた。

 雲が吹き飛ばされ、急に青空が広がったのである。

 黄金色の陽光が、どっとばかりに地上に降り注ぐ。

 雪がそれを照り返し、目も眩む(くらむ)光が、地上に満ちた。

 風は、恐ろしく強かった。


「父上! 今度はこっちが飛んだえ」

「はいはい。いま行く」

 イリスに呼ばれて、鬼神。

 板を1枚、持ってゆく。

 猛烈な風が、その板を鬼神からかっさらおうとする。

「そうは行かんぞ。『力』のルーン! 『向きを変える』!」

 鬼神は、手から板へと、『力』のルーンのはたらきを張り巡らせた。

 板はぴたりと手に吸いつき、風にもびくともせぬようになる。

 さらに、『力』のルーンのわざ、『向きを変える』でもって、板を守る。

 ぐるぐると暴れ狂う風の力で板が折れたりひしゃげたりせぬように、力を逸らす(そらす)んである。

 こうして、地味~にルーンを使いながら、鬼神は板を運んでった。

 猛烈な地吹雪(じふぶき)によって、視界はほとんどゼロである。

 兵舎自体、雪にすっぽり埋もれてしまい、白い世界の白い盛り上がりに過ぎぬ状態である。

 鬼神は六腕の何本かで板を守りつつ、残った何本かでバッサバッサと雪かきをして、イリスが叫んどる場所まで到達した。

「かぶせるぞ」

「どうぞー!」

 吠え猛る風の中、鬼神は背を伸ばし、板を屋根に乗っけた。手で押さえつける。

 すると、中からトンテンカンテンとハンマー撃つ音が聞こえてきた。

 内側から、イリスや兵士どもが、板を屋根に打ち止めておるんである。


 新生アルス軍の兵舎。

 鬼神とイリスは、ルシーナの出撃後も、ここに留まっておったんである。

 あのあと、アルス避難民どもがやって来て、兵舎に逃げ込んだ。みな服を凍りつかせ、震えながら駆け込んで来た。

 風が強くなり、屋根が飛ばされ、兵士どもが駆けずり回る。イリスもその手伝いを始めた。

 鬼神も、知らん顔でどっか行くことはできず、手伝うておったんである。

「私は何をしておるのだ? 可愛い長女が前線に向かったというのに」と、考えながら。


 ぶっ飛んだ屋根の修理、終わる。

 鬼神、玄関へ回る。

 ピンクのダークエルフの女軍人が、外に出てきた。フレイミニア隊長である。

 イリスも一緒であった。

 叩きつけるような地吹雪に目を細めつつ、鬼神と話す。

「ありがとうございます。鬼神さま。

 こんな仕事、ほんま、申し訳ございません」

「いや。なに」

「おかげさまで、うちは死人出さずに済みそうです」

「うむ」

 鬼神、西を見る。

 風上の方向である。

 そこに、巨大な岩、3つあり。

 岩と岩の隙間から、白い大蛇のように地吹雪が入ってくる。

 だが、建物を吹っ飛ばすような突風は、完全に防がれておった。

 なにしろ、木造の平屋より大きいぐらいの巨岩であるからして。

 いったい、誰が、こんなものを設置したのか?

「こんなでっかい岩、誰も運ばれへんからに」とイリス。

「まあな」

 ──もちろん、設置したのは、鬼神であった。

 イリスが「兵舎が飛ばされる」と心配し、「岩で壁造ったらどうかに?」と持ちかけてきたのである。

 それで、やってみた。

 最初は岩をぴったりくっつけて並べたが、これは失敗であった。隙間風がひどくなったんである。イリスが宙に浮いてしまい、鬼神がとっさに引っ掴まなければ、空に吸い上げられるところであった。

 それで、岩を少し離し、またジグザグにずらしたりして、わざと風の道を造ってやったところ、うまく行った。

「風も、すもうと同じだな」

「はい?」

「いや。風も、いなす方法があるのだなと思うたのだ。

 それより、2人とも、中に入りなさい。外は寒いし、万が一もあるからのう」

「ですが、鬼神さまは」

「鬼神さまは、この程度で死んだりはせんのだ」

 鬼神さま。

 胸張って、威張る。

「フレイミニア隊長は、みなの側にいてやりなさい」

「お言葉に甘えて。ほんまにありがとうございます」

 フレイミニア隊長。

 目の下に隈の出た顔で、ぴしっと敬礼して、中へ戻った。

「・・・隊長、また夜番のときに、こんななってん」とイリス。「あの人、ただでさえ昼弱いのに、かわいそうや」

「うむ。無理せんよう、見てやるがよい」

「うん。ほな、うちも中入るに・・・」

 イリス。

 そう言うたまま、固まった。

 西の空を見て、ぽかんとする。

「どうしたのだ? さっさと入らんか」

 と押しやろうとする鬼神の、凍りついた袖を。

 イリスが、掴んだ。

「ち、父上。来た。来た」

「うん?」

「じんりゅう。来た」


 西の空に。

 太陽を、覆い隠して。

 どんよりと薄暗い、雨雲のごとき、つばさを広げて。


 巨大な竜が、その顔を、見せたのである。


4、『力』のしんずい


 神竜は、大きかった。

 なにしろ、広げたつばさが、全天を覆っておるのだから!

 西の空に、頭がある。

 左のつばさは、ぐるーっと空を覆い尽くして、その翼端、なんと北の空まで続いておる!

 右のつばさも、ぐるーっと空を覆い尽くして、南の空まで続いておる!

 雲が、細い紐のように、神竜の頭の周囲にたなびいておる。

 その図体は。

 見えぬ。

 地平線の向こうまで、伸びておるがゆえ。

 その全貌は、地上にあっては、見ることすらできぬ。


 かかる巨大怪物が。

 ぬーーーーーっ・・・・・・・・・と、こちらへ迫って来おるのだ。


「なんだこれは」鬼神はつぶやいた。「悪い夢かなんかか」

「お、おっ父・・・!」

 しがみついてくるイリスを、鬼神は無意識に抱き寄せた。

「どんだけでかいのだ。

 あれは、生きものなのか?」


 遥か遠くの山が、砕け散った──


「む?」

 鬼神、いやな予感を覚える。

「ひらけ! 巨人の眼!」

 カッ! おでこの目ひらく。

「むむむ?」


 ──ちがう。山が砕けたのではない。

 山の表面に生えておる木々、岩が、吹き飛ばされて、空に舞い上がったのだ!


「いかん。イリス。中に入れ!」

 鬼神は娘を兵舎に入れた。

 西を睨む。

「来るぞ! いままでの比でないやつが!」


 遠くの山が、ぱあんと弾けるみたいに、木々を飛び散らせた。

 まるで、たんぽぽの綿毛が突風に舞い上がるがごとし。

 軽々と──

 だが、舞い上がっておるのは、大木である!

 数百本、数千本という数の!


 鬼神。

 ダッシュした。

 『丘の街』の背後にそびえる、岩山へ。


 近くの山が、ぱあんと弾けるみたいに、木々を飛び散らせた。

 地響きがした。

 直後。

 轟音!!!

 衝撃波!!!!!

 雷が耳元に落ちたがごときショック!

 丘の街を、新生アルス庁舎を、兵舎を、その衝撃波、呑み込まんと──


「やらぬ!」

 鬼神は怒鳴った。

「おまえなんぞに、人間どもの生命はやらぬ!

 この鬼神が、今日、この場に居るからには!

 『力』のルーン! 山よ、盾となれ!!!」


 ず、ご、ご、ご、ご、ご・・・!

 がら、がら、がら、がら・・・!!!


 初めてルーンを持った若き日に、試しでやって以来。

 じつに、数十年ぶりに──


 鬼神は、岩山を丸ごと、引っこ抜いて、持ち上げた!


 それと同時に、巨大な衝撃波が、丘の街に到達する。

 音はもはや、耳に聞こえる限界を超えた。

 ギィーーーン・・・という、音だか痛みだかわからんものが聞こえるだけとなる。

 鬼神も、頭を殴られたようになり、なんも聞こえず、なんも見えんようになってしもうた。

 上も下もわからぬ。

 だが。

 無音の闇の中で、かえって、見えた。


(見えるぞ。『力』がはたらいておるのが、見える!)


 あまりの衝撃に、耳やられ、目やられ、平衡感覚(へいこうかんかく)すらなくなって。

 初めて鬼神に、それが見えた。

 『力』の神髄が!

 

(空走る風の『力』が見えるぞ!

 まるで、水の流れのようにじゃ!

 これなら、いなすことだって、できるぞ!)

 鬼神。

 ニヤリと笑った。

 三眼ギラリと見開いて、六腕でがっちり岩山抱いた。

(『力』のルーン!

 『向きを変える』!

 風よ逸れよ! 私の守護する街に、入るんじゃない!)


 ずずーーーん・・・!


 鬼神の、この世でもっとも強い腕に、『力』のうごめきが伝わってきた。

 暴れ狂う衝撃波──暴風と呼ぶのも生易しい破壊の力、そのうごめきが。

 鬼神はそれを、上空へ逸らした。ぽーんと、はね上げてやった。


(・・・おっと?

 あっちの地面がめくれそうになっておるわい。

 あんまり派手にやっては、まずいようだな。

 よし。では、千切って(ちぎって)やろう。

 千切っては投げ、千切っては投げじゃ!

 ・・・ぬう! くそ! 今度は、竜巻ができてしもうた!

 ええい、では、こっちの竜巻に、あっちの竜巻をぶつけて、相殺じゃ!

 やれ忙しい! だが、私にはできるぞ!)


 もしも、このとき。

 上空から、鬼神を眺める者が居ったならば。

 鬼神はあたかも、三角州のように見えたであろう。

 押し寄せる激流──衝撃波と、巻き上げられた木、岩、土、水の混ざり合った、破滅の濁流。

 その激流の中央に、鬼神と岩山。

 叩きつける木や岩を受け止める岩山は、火花を立てておる。

 だが、鬼神はびくともせぬ。

 そして、鬼神に守られた丘の街は、まったくもって、静謐(せいひつ)である。

 木や岩が巻き上げられることもなく、衝撃波に砕かれることもなく、人間が吹っ飛ばされることもない。


 激流に、静謐なる三角州を生み出して、人間の街を守る。

 ──それが、鬼神のなしたことであった。


「やれ。なんとかなったようだ・・・。

 おや? 耳が聞こえるようになっておる。

 うむむ? 風はどうしたのだ?」

 と。

 鬼神が、気が付いた、ちょうどそのとき。

「おおう! なんじゃ!」

 轟くがごとき声が、鬼神の耳に届いた。

「おまえさん、『力』のはたらき、ついに会得した(えとくした)ようじゃのう」

「む?! その声は!」

 鬼神。

 空を見る。

 西の空。空覆う、神竜の方向。

 大きな大きな、二本足の、おっさんみたいなものが、こっちを振り向きながら、立っておった。

「わっはっは!

 この、赤く大きな猿みたいな奴め!

 やっぱりおまえは、馬鹿ではなかったようだわい」

「──義父上!」


 巨人の王が。

 西の彼方にあって、鬼神を風から守っておったのである。


5、巨人の王、しす


 目がひとつしかない、巨人の王。

 鬼神ですら、見上げねばならないほどに大きい、偉大なる者どもの王。

 これまた、三角洲!

 鬼神がやったのとおんなじように、西から押し寄せてくる激流、左右と天空へ逸らし、背後の空間を守っておる。

 背後の空間──鬼神を含み、丘の街を含み、アルフェロン湖すらも含む──広大なる空間を!

 アルフェロンのすべてを! 三角州にすっぽりと、入れてしまっておる!

 破滅の嵐を!

 片手に持ったハンマーを、くるんくるん回しながら!

 すいー。

 あっさりと減衰し、切り分け、受け流してしまっておる!

 おかげさんで。

 鬼神はもはや、なんもせんでええようになった。

 岩山降ろした。

 叫んだ。

「義父上! なんでじゃ!」

「なにがなんでじゃ」

「なんで秘密にした? なんで、私をのけ者にしたのだ!

 私も一緒に戦うぞ。私を戦に加えるのだ!」

「馬鹿め」

 巨人の王。

 ついさっき『馬鹿じゃないようだ』と褒めてからの、『馬鹿め』である。

「わしの娘に恥をかかせておいて、わしの隣に並ぶじゃと?

 調子のええことを言うんじゃないわ。

 近付くんじゃないぞ。

 近付いたら、叩きつぶすぞ」

「そんなこと言うとる場合か!」

「そんなことじゃと! わしの娘を、そんなことじゃと!」

 巨人の王、キレる。

 一瞬、神竜放っといて、鬼神のほうへ突撃して来そうな気配となる。

 が、そのとき。

 上空にチラリと、黒い筒束ねたみたいな空飛ぶ物体が見えた。

 巨人の王。途端に、ひるんだ。

「・・・む。うむ。わかったわい。

 敵は神竜じゃ。わかっておる。あの猿めは、後回しにするわい」

「猿じゃないわ!」

「ごちゃごちゃうるさい奴め! そこで、しかと見ておれ」

 巨人の王は、鬼神に最後の一言を寄越した。

「巨人の最後の戦いじゃ」


 巨人の王。

 にゅーーーっ・・・と、でかくなる。

 にゅーーーーーーーーーーーーーー・・・・・・・・・っと、入道雲が育つがごとく、でかくなってゆく。


 ずしーん・・・。

 ずしーん・・・。

 その一歩ごとに、地震が起こる。

 鬼神には、その地震が、優しいものであることがわかった。

 とても慎重に慎重に一歩ずつ進んだ結果、それでもどうしようもなく起こる揺れなのだ。それが、わかった。


 神竜が、口を開いた。

 その口は、火口。何千何百の火山を集めたよりも、なお大きい、火口であった。

「巨人の王よ」

 と、神竜は言うた。

 その声は、嵐のうなりであった。

「自分から出て来たか。ようやく、死ぬ気になったようだな」

「神竜よ」巨人の王は、呼びかけた。「雌雄を決する(しゆうをけっする)ときじゃ」

「巨人の王よ。今日、倒れ伏すのは、貴様のほうだ」

 神竜は、よだれを垂らした。

 ドロドロと地上を焼く、溶岩のよだれ!

 未開の原野、たちまち燃え上がる! 雪は一瞬にして蒸発し、赤々と燃え始めた!

「巨人の王よ。よくもこの私を、いちど殺してくれたな」

「おまえこそ、宮殿を蹴り壊し、わしの妻を死なせよった。

 あのまま死んでおれば、今日の災いは起こらなんだものを」

「死ね」

「おまえこそ、ものいわぬものとなれ!」


 両者の動きは、あまりにもゆっくりとしておった。

 前足伸ばし、爪で引っ掻こうとする神竜。

 ハンマー振るい、迎え撃たんとする巨人の王。

 雲と雲の、相討つがごとし。

 ゆっくりと動いておるように見えて、その速度、いかなる鳥よりも遥かに速い!

 あまりの速さに衝撃波起こし、雷電四方にまき散らし、空張り裂ける音立てて。

 神竜と巨人の王は、激突した!


 巨人の王のハンマーが、神竜の前足とぶつかって、互いに弾き返した。

「ふむ」と巨人の王。「おまえは、変わっとらんようだのう」

「そのハンマーも、変わっておらぬ。

 ならば、私はよく知っている」

 神竜はこう唱えた。

「『天』のルーン! 私は、巨人の王のハンマーの上に立つ」

 もう一度、両者は激突した。

 だが、今度は、結果は一方的であった。

 巨人の王が、ハンマーを弾かれて、体勢を崩したのだ!

 神竜のほうは、前足をそのまま伸ばし、巨人の王の肩を引っ掻いた。

 火花が大空に飛び散った。

「ヨロイか」

 神竜は、自分の爪を弾き返した巨人の王の肩を見た。

 鍛冶師の作業着のごとき、巨人の王の服。その内部に、オレンジに輝く鎖かたびらが見えておった。

「だが、その金属ならば、私はよく知っている。

 『天』のルーン! 私は、巨人の金のヨロイの上に立つ」

「ふむ・・・」

 みたび、両者は激突した。

 今度は巨人の王が、こう唱えた。

「『力』のはたらきの武具! 神竜を討つのじゃ!」


 ずごおおおおーーーん・・・・・・・・・!!!


 巨人の王のハンマーが、神竜の脇腹を捉えた。

 巨大な図体に、恐ろしい規模の波が走った。雲の色したウロコが、バキバキ剥がれて宙を飛んだ。

「ばかな」

 前足を弾き返され、一方的に攻撃を喰らうた神竜。

 巨大な顔に、驚きを浮かべた。

「なぜだ。私は、おまえのハンマーを上回ったはず。

 なぜ、そのハンマーに、私は傷つけられたのだ」

「工夫をしたからじゃ」

「くふうだと・・・」

「そうじゃ。このハンマーには──」

 言いかけた、巨人の王であったが。

 空高く飛んだウロコの、行く末を見て。

 うち1枚が、アルフェロン湖を飛び越えて、遥か水平線の向こうへ落ちてゆくのを見て。

「ばかな」

 恐怖の表情を浮かべた。

「いかん! 工房に、ウロコが!」


 地震が響いてきた。

 神竜のウロコが、世界のあちこちに墜落した衝撃である。

 それほどに、巨大なウロコであったのだ。


「おお! 娘よ!」

 巨人の王がそう叫び、神竜から目を離した、その隙に。

「よそ見をしたな。おまえの負けだ」

 神竜の爪が、巨人の王を貫いた。

 白い山脈のごとき、爪。

 鍛冶師の服をつらぬき、内側の鎖かたびらを貫き、巨人の王の胸をつらぬいて、その背中に突き出しておった。

「ぬう。やられた」と、巨人の王。

「やったぞ」

 と、神竜。

「今日は素晴らしい日となった。

 にっくき宿敵を、とうとう倒した日となったのだから。

 これでもう、私を脅かす者は、この世に居らなくなった。

 私は世界の支配者となった! これからは、竜の時代が始まるのだ!」

「さて、それはどうかのう」

 巨人の王は、笑った。

「神竜よ。知恵なき怪物よ。

 おまえさんは、『工夫をする』ということを知らぬ。

 ただ、『天』のルーンに頼って、他人を踏みつけにして、生き延びてきただけじゃ。

 そんなことは、続きはせぬ。必ず、終わりが来るのじゃ。

 それが定めというものじゃ」

「ふん。負け惜しみか。とっととくたばれ」

「言われんでも、そうなるわい。

 心臓を貫かれたのじゃからして。

 さすがのわしも、これは致命傷ということじゃ。

 ──さて、これはもらってゆくぞ」

 巨人の王。

 最後に、ハンマーをひと振るい。

 心臓に突き刺さった神竜の爪を、へし折った。


 世界が割れるような音させて。

 神竜の爪が、1本、もげた。


「ぐわあ!」神竜わめく。

「さて。これが限界のようじゃ」

 巨人の王。

 よたよたと後退した。

 倒れる場所を探して、周囲を見回す。

 すると。

 その足元に、わーっと、人影が走り出して来た。

「王!」「王!」「おお! 致命傷」

 巨人の王の、弟子どもであった。

「王を助けよ」「神竜を叩け」

 弟子ども。

 ある者どもはジャンプをして、神竜に飛びかかった。

 その鼻と言わず目と言わず、嫌がるところをどこでも、ハンマーやら、つるはしやらで、攻撃をした。

 ある者どもは巨人の王を足元から支え、ゆっくり横たわらせた。

 巨人の王が転倒すれば、大陸に激震が走るからである。鬼神が一回やらかしたアレである。それを避けようとしたのだ。

「ちょこざいな。目ざわりな。

 雑魚どもめ。死ね」

 神竜が、ブレスを吐いた。

 火山を何千何百と集めたがごとき口を、がばーっと開け、恐ろしいマグマを吐き散らしたのだ。

「熱い」「灼熱」「抵抗不能」「溶鉱炉」

 巨人のお弟子どもは、ばたばたと倒れた。

 生き残った者は、なおも殴り、蹴り、ハンマーで叩き、つるはしで掘削し、やっとこでねじり上げた。

 しかし、その力、神竜に及ばず。

 巨人のお弟子どもは、とうとうみーんな、倒れてしもうた。

 だが、その犠牲によって、巨人の王は静かに横たえられ、大地震を引き起こさずに済んだ。このことだけは、言うておかねばならない。巨人は、その最期には、人間を守って死んだということは。

「馬鹿め」巨人の王はつぶやいた。

「死出の旅、お伴せん」弟子ども、そう応えた。

「そのようじゃ。ゆくとするか」

「了解」「辞世」「出発」


「・・・おお」

 鬼神。

 遥か西方でくり広げられた戦いに、ひざまずいて、祈りを捧げた。

「義父上。お弟子さんがた。

 巨人の最後の戦い、この鬼神、しかと見届けましたぞ」

 そして。

 こう嘆いたのであった。

「ああ! だが、最後の戦いならば、なおのこと!

 この鬼神も、一緒に戦わせて欲しかった・・・」


 巨人の王、死す。

 何千年と秘宝を鍛冶してきた種族、ここに、終わりを迎えたのであった。


※このページの修正記録


2023/02/27

「4、巨人の王、しす」「5、巨人の王、しす」と、同じ見出しを2つ書いてしまっておりました。

「4、力のしんずい」「5、巨人の王、しす」に変更しました・・・

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