さびしい夜にはエッセイを書こう

中静弥美

第1話 フィクションとノンフィクション

 近年、重いテーマの作品を書いてきた。

 病気、いじめ、虐待、DV、その他……。

 書いている内容にリアリティーがありすぎるのか、それともそんなものを書くこと自体が駄目なのか、いい感じになった男性に引かれることも多かった。

 小説を書いていると言うと、向こうから「俺、本読むの好きなんだよね! 是非読みたい! 読ませて!」と言ってくるのに、読ませると態度が変わるというね……。

 どういうことなんだ。

「重いし、引かれることも多いから、読ませたくない」って断っても、「俺は大丈夫だよ! 引いたりなんかしないから」ってしつこくお願いされる。

 私も自分を理解して欲しい気持ちはあるから、それなら……と読んでもらう。

 読んでいる途中で音信不通になった人もいれば、「読んだよ。自分でも情けないけど、君を支えていく自信がなくなった。ごめんなさい」と言って去っていった人もいる。

 なんなんだ。

 私が何をしたというのか。

 うおおおおん。


 女友達に、「これは小説じゃないね、体験記だ」と言われたことがある。

 もしかしたら、引いて行った男たちも、そう思ったのだろうか。

 全部私の実話だと思ったのか……?

 それだけリアルによく書けてたと思えばいいのか?


 例えば難産の話を書いたら、私が難産を経験したと思うらしい(そんな事実はない)。そういえば、自分と同じだと、私に親近感を覚えてくれる女性もいた。こうなると嘘をついているような罪悪感すら出てくる。

 もちろん同時に、経験したことも織り交ぜてるから、架空と現実が曖昧になる。


 どうしろっていうんじゃ……。

 だって殺人犯の話をリアルに書いたら、自首しろってコメントが来るかもしれないんだよ(さすがにそれはない、だろうと思いたい)。


 他の作家さんに相談したところ、「実話かもしれない、と思わせるのがあなたの作風。そこが面白い」と言われた。ありがたい言葉だ。うれしい。

 そっか……面白いんならいいや。

 考えることに疲れていた私は、すんなりその言葉を受け入れた。

 これからも重い話をリアル寄りに書いていきたい。

 

 きっとまた小説のことで男に逃げられるだろうが、もうそれは宿命だと思って諦める。


 




 

 


 

  

 


 

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