学園能力バトルパワー系ラノベ

やぎざ

お前もブレインの使用権を求めて 01

 「この作戦が遂行されたなら、ジョウトウグループはもっと大きくなる。それはジョウトウだけでなく、下に着く俺らにも繁栄は還元される」


 白を基調にした体長5m代の大型バトルスーツに乗り込むのはオールバックをした無精ひげの男だ。老け顔だが、これでも高等部3年、呉土シラタカが言う。

 まだ仕事を覚えたてで、おぼつかない様子の久住クガツに。


 「それは分かるけど、ちょっと分が悪くねえか? 呉土の兄貴」

 

 4世代型起動兵装、ホワイトフロント。

 その起動に用いるキーカードと、微糖のコーヒーをクガツは手渡す。

 微糖と名を売ってはいるが妙に甘ったるく、それが丁度良いと呉土シラタカは好いている銘柄コーヒーだ。


 「仕方ないって奴だ。俺らみたいな孤児紛いは中央管理の設けたシケた施設でシケ飯でも食うしかねえ。だったら傭兵の真似事でもやってうまいメシ食って、良い女抱いてイイ感じに死にたいっしょ」

 「それも、そうっすけど」

 「怖いか?」

 

 クガツは何か強がった言葉ひとつでも吐こうとしたが、それを遮るようにブザーが鳴った。


 『第7機動部隊、出撃シーケンス前。最終確認を行ってください』

 「……時間だ。ちょっと行ってくるわ」


 人差し指と中指を並べて立てて、無精ひげの男はバトルスーツのハッチを閉じた。


 クガツは呉土シラタカの人物と、彼との記憶を反芻していた。ひょうひょうとしてつかみどころがない。女をあてがってやると言って夜の街に連れ出されたこともある。でも、チャンスの時には自分だけ抜け駆けして良い思いをするなんてこともあって、なんだか信頼を置けない男だ。


 だが、そんな彼が孤児であるクガツに夢を見させてくれた。精密に栄養管理されたペースト食よりも、タールの様にドロドロになった廃油寸前のそれで揚げたメルルーサの切り身の方がおいしかったし、寝床は臭かったが表現規制され廃版となった刺激的な漫画をゴロゴロをしながら読むのはそれはまた至福だった。風呂も週二回でなく毎日好きな時に入ることができる。酒は飲むことはできなかったが男も女もグデグデになりながら時には嘔吐するあの雰囲気は和気あいあいとしていて心地が良かった。


 「帰ってきてくれよ……」


 青白い炎を出して出撃する白の起動兵装。シラタカの乗り込んだそれをクガツはただ安否を願いながら見送る。ジョウトウグループの作った超常係数に応じて出力を上げる兵器だ。きっと、きっと。


 ──後日、ジョウトウグループと西櫻会のサイトX0-77をめぐっての領土争いは西櫻会の勝利で幕を閉じる。

 廃棄物処理の令がセントラルの事務局から言い渡され、区画清掃が始まる。バイトとして雇われたクガツは白のバトルスーツを探すが、そのどれもが焦げて腕部や脚部がもげたスクラップしか見つからなかった。

 


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