理不尽姫は我が道を行く
@ma-no
第1話 新エリア開始
新エリア開始から遅れて三日、デリング・オンラインからバルドル・オンラインへ移住した金髪の女騎士オティリーは、新しい町に向けて歩いていた。
「やめてください……」
すると前方に猫耳を生やした小柄な女の子が、ガラの悪い五人の男に囲まれていた。
「ぎゃははは。デリングのプレイヤーは、有り金全部置いて行くか死に戻りして半分差し出すのが、ここのルールなんだよ」
残念な事に、新エリア開始直後からプレイヤーがプレイヤーを殺す事態が多発している。
デリングから移住した者は全財産を持ってバルドルの第一の町に移動するので、
「ここでもPKか……どこも変わらんのだな」
そんな状況を見てもオティリーは我関せずといった顔で歩いていたら、ガラの悪い大男に道を塞がれる。
「お~っと。この先には通行料が必要なんだな~? お姉ちゃんも、有り金置いて行きな」
「置いていかないとどうするのだ?」
「俺たちゃPKだ! 殺すに決まってるだろ!!」
「なるほど……わかった」
オティリーが諦めたような顔をすると、大男は笑いながら歩み寄る。
「そうそう。大人しく出せばいいんだ。しっかし、いい装備だな。こりゃ、金も期待できるぜ……へ??」
大男がオティリーに手を伸ばした瞬間、オティリーが素早く振るった剣で、首を切断されて死に戻り。光の粒子となって消えた。
「テメェ! 油断を誘って斬るなんてきたねぇぞ!!」
仲間を殺されたのならば、残りの四人の男も黙っていられないと剣を抜いた。
「いつも思うのだが、マナーに反しているのにも関わらず、数人がかりで囲むことは汚くないのか?」
「うっせぇ! 死にやがれ!!」
冷静に人道を問うオティリーだったが、四人の男は一斉に襲い掛かり、瞬く間に三人の男は首を落とされて死に戻りとなった。
「つ、つえぇ……」
「浅かったか……いや、よく避けたと褒めるべきか」
「くっ……くそ! これならどうだ!!」
「キャーーー!」
ただ一人生き残った盗賊風の男は猫耳娘の後ろに回り、首筋にナイフを当てた。
「こいつが死んでもいいのか!」
「い、いや……やめてください……」
人質を取られたオティリーであったが、顔色一つ変えずに答える。
「かまわん」
「は? 仲間を助けようとしてたんじゃねぇのかよ!」
「その娘は仲間でもなんでもないぞ。我としては、向かって来る者を斬り捨てただけだ」
「た、助けて……」
オティリーが見殺し発言をすると、猫耳娘は潤んだ瞳でオティリーを見るがお構いなし。
「さっさと殺すがよい。その娘の金を手に入れた貴様を殺し、我の糧としてやる」
「そ、そんな……」
「助けを求めてる子がいるのに、テメェには人の心がないのか! ぎゃっ!?」
盗賊が道徳を説いてナイフをオティリーに向けた瞬間、オティリーは信じられない速度で動き、盗賊の首を落としたのであった。
「あ、ありがとうございました!」
命を助けられた猫耳娘は、剣を鞘に収めているオティリーに深々と頭を下げる。
「我は見殺しにしようとしたのだ。礼などいらん」
「いえ……あの発言は、私からナイフを遠ざける口実だったのですよね? わかっていますとも!」
「いや、本気だったぞ」
「またまた~。女騎士さんのロールプレイをしているのですよね? すっごくハマっていましたよ!」
どうやら猫耳娘は、オティリーの見た目や喋り方で、気高い女騎士を演じていると思っている。
「あっ! 名乗るのを忘れていましたね。うちはメイと言うニャー」
「……我はオティリーだ。しかし、『ニャー』とはなんだ?」
「え……その……オティリーさんが完璧な女騎士さんを演じているので、私もロールプレイをしてみようかと思いまして……恥ずかしいです~」
どうやらメイは、猫耳キャラを試してみたのだがオティリーには伝わらず。顔を真っ赤にして涙目になってしまった。
「まぁいいのではないか? ロールプレイが何のことかよくわからんが、やりたいように自由にするべきだ。では、さらばだ」
「ま、待ってください!」
オティリーは別れを告げて歩き出したが、メイが回り込む。
「まだ何か?」
「その……またPKにからまれそうで怖いので……お供してはダメですか?」
メイは恥を忍んで小動物のように目を潤ませる。
「断る」
「そんな~~~」
しかし一刀両断。オティリーはメイを無視して歩き出してしまった。
「報酬! 報酬を払います! 私の護衛依頼を受けてください!!」
「……いくら払うのだ?」
「えっと……あまりお金は持ってないのですが」
「では、交渉決裂だ」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「ケーキ! ケーキなんかどうですか? 私が作った物ですけど、NPCの物よりもレア度が高いですよ!!」
何を言い出すかと思ったら、高々ケーキ。それも、
そんな安物では、デリングでトップクラスの装備をつけたオティリーには通じないのであっ……
「フルーツタルトはないのか!?」
いや、意外と鼻息荒く食い付くのであったとさ。
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