中 シンキングタイム!!

 あたしはもう一度自分のメガネを確認する。うん、あたしメガネかけてる。


 そんで、家族もみんなメガネかけてる。


 うん?


 だれのメガネ?


「まさかっ!? だれかのスペアっ!?」


 まずはあたしのじゃないっ!!


 おじいちゃんもおばあちゃんも、いろんなものをすぐなくすけれど、メガネをなくしたりはしないよね?


 弟のイサムはうらやましいほど視力がいい。


 お父さんとお母さんの、老眼鏡かな?


「ねぇ、お母さん」

「なぁに?」

「メガネ、曇ってるよ?」


 聞きたいことはそれじゃない。だけど、あんまり普通に調理してるもんだから、気になっちゃって。


「平気、平気!! 慣れてるから」


 そういうことじゃなくて。


「じゃあさあ、あのメガネ、だれのめがね?」

「なにその回文みたいな文章は」


 たしかになんだか語呂がいいけど。気になっているのはそれじゃない。


「あれはね――」


 言いかけたお母さんの視界をさえぎって、弟のイサムが二階から降りてきた。


「あった、あった!! こんなところにメガネ置くなよっ」


 うん? 今日イサムは、友達を連れてきた。でも、よく見ると、お母さんの視界をさえぎって降りてきたのはイサムじゃない!!


「だれっ!?」

「うっす。山田っす!!」

「そのメガネは山田くんのメガネ?」

「ちがいますよ」


 さわやかに白い歯を見せる山田くん。きっとあと十年もしたら好青年に育つんだろうなって、今気になっているのはそこじゃないっ!!


「じゃあ、だれのメガネ?」

「それは――」


 山田くんはゆっくりと振り向いた。


 つづく



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