第2話 胸が痛い(テツヤ目線)

 うちのメンバーの末っ子レイジは、それは可愛い。兄さんたちもみんな可愛がって、すぐ食べ物を与えて手なずけようとするんだ。メンバーの中で俺より年下なのはレイジだけだから、俺も本当の弟のように可愛がっている。

 最近はすっかり大人っぽくなって、時々知らない顔もするようになったが、今も一番仲良しだ。ちょっと前まではメンバー全員で一緒に暮らしていた。昔は7人が雑魚寝で、俺とレイジはいつも一つの布団でくっついて寝ていたものだ。懐かしい。それで、時々また昔のようにレイジとくっついて寝たくなると、他のメンバーには内緒で泊まりに行くのだ。レイジとくっつくととても落ち着く。

 だが、最近レイジが挨拶だと言ってキスしてくるのには困った。嫌なわけじゃないが、あれをされるとどうも・・・心臓の辺りが痛くなる。俺、病気なのかな。

「どうした?テツヤ。悩み事か?」

ぼーっとしていたら、カズキにそう言われた。カズキは俺と同い年だ。

「え?ああ、まあ。」

「言ってみろよ。お前はいつもこじらせるから、早めに俺に相談した方がいいぞ。」

カズキは良い奴だ。

「実はさ、最近心臓の辺りが痛くなる事があるんだ。病気かな。」

俺が言うと、

「マジで?いつ?走ったり踊ったりした時か?」

カズキが驚いた顔で言う。

「いや、その・・・キスした時、かな。」

「は・・・?」

カズキの目が点になる。

「えっと、聞いてもいいかな。誰とキスしたって?」

当然そう聞かれるわな。言ってもいいのか?まあ、挨拶のキスだしな。俺とレイジは兄弟のようなものだし。

「レイジだよ。」

「お、お前ら、とうとう付き合い始めたのか!」

「しっ!違う、そういうんじゃないよ。」

カズキが大きな声を出したので、慌てて制した。

「そういうんじゃなくて、何だよ。キスしてるんだろ?」

「挨拶のキスだよ。仲良しならするだろ?」

また、カズキの目が点になった。

「お前ね、欧米人ならともかく・・・。あ、キスってどこに?頬とか?」

「いや・・・あいつ、最近唇にしてくるんだよな。」

「そ、それで胸が?」

「うん。キスされると、この辺りがズキンって痛くなるんだ。」

俺が心臓の辺りを触って言うと、

「なーるほど・・・。」

カズキは顎に親指と人差し指を当て、俺の顔をじっと見た。

「何?」

「お前は病気ではない。それは、恋だよ、恋。」

「コイ?池で泳ぐ・・・。」

「バカか。恋愛だよ。ラブ。」

「ラ・・・何だって?」

俺は聞き返した。聞こえていたけれども、よく理解出来なくて。

「お前ね、何年生きてんだよ。」

カズキは呆れた、という風に肩をすくめた。

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