第21話:ノーブレスオブリージュ07


 ちなみに実際のカオスのモノは凶悪だ。


 それを受ける立場にある許嫁のリリンが躊躇するほどのモノである。


 本人は、


「可愛い息子」


 と思っているらしいが、


「ありえません」


「自覚してください」


 とリリンとアイスは言うのだった。


「カオスの……モノ……」


 ゴクリとカナリヤが唾を飲む。


「興味が御有りで?」


 悪戯っぽく問うたのはアイス。


「そそそ!」


「そそそ?」


「そんなわけありませんわ!」


 顔を真っ赤にしてカナリヤは否定する。


 それだけでカオスとリリンとアイスは悟れた。


 ことこの件に関しては、


「自分も同類」


 と聡い三人だ。


「もしかして」


 とコレはリリン。


「もしかしてカナリヤちゃんはカオス様に惚れてる?」


「そんなわけありせんわ!」


 この場合の否定は墓穴だ。


「あ」


「なるほど」


「そういうこと」


 予想が確信に変わる瞬間だった。


「でもカオス様はあげませんよ?」


「カオス兄様はリリン様とアイスのモノですから」


「別にそんなこと思ってませんわ!」


 空虚にカナリヤの言葉が響く。


「ああ、だからか」


 入浴しているカオスが人差し指を立てた。


「何のことですの?」


 ギロリと鋭利な眼を向けるカナリヤ。


「いや、おかしいとは思ってたんだ」


「何がですの?」


「何でカナリヤがノンワードノンワードと言って俺に絡んでくるのかってな」


 そんなカオスの言の葉に、


「ああ」


「なぁる」


 リリンとアイスも頷いた。


「それは……!」


「それは?」


「ノーブレスオブリージュを行使しないカオスを見るに見かねてのことですわ!」


 苦しい言い訳だった。


「へぇ」


「へー」


「へ~」


 やる気のない同意が向けられる。


 当然カオスとリリンとアイスの物だ。


「確かにそう言われれば納得ですね」


「然りです」


 もはや趨勢は決していた。


「絡んでくるのが愛情の裏返しだったわけだ」


 くつと笑うカオスに、


「違います!」


 カナリヤは顔を真っ赤にして反論する。


「ただ貴族として自覚の無いカオスが気に入らなかっただけで……!」


「はいはい」


 あっさりと流される。


「いやぁ」


 ふと息を吐くカオス。


「モテる男は大変だ」


「だから違うと……!」


 やはり空虚なカナリヤの言。


 タプンと大きな乳房が揺れる。


「巨乳女子は魅力的だなぁ」


 下品な言葉を臆せず口にするカオスだった。


「むぅ」


「むむ」


 カナリヤに劣る胸のリリンとペッタンコのアイスが危惧する。


「この変態!」


「褒め言葉か?」


「そんなわけないでしょう!」


 カナリヤが激昂。


「しかして」


 カオスはカナリヤの巨乳を水着越しにじっくりと見る。


「……っ!」


 カナリヤは腕で胸を隠したが、その大きさ故に隠そうとしても零れ落ちるほどのボリュームだ。


「劣情を催すほどの胸だな」


「この変態!」


「褒め言葉と受け取っておこう」


 どこまでもカオスは平常運転。


「む、胸が、大きい方が、カオスの好みですの……?」


 おずおずと問うカナリヤに、


「大きければ大きいほどいいな」


 遠慮もへったくれもないカオスだった。


「そう……ですか……」


「悪くない」


 という態度のカナリヤ。


「カオス様?」


「カオス兄様?」


 リリンとアイスが不平を漏らす。


「いや別に胸だけで女の子の価値を計るほど落ちぶれていないぞ?」


「本当ですか?」


「本当ですの?」


「インディアン嘘つかない」


「カオス様!」


「カオス兄様!」


 不満爆発なリリンとアイスだった。

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