雑多な夢

@Hashiya-Kare

第1話 色のある夢

≪ファクム≫


アイアイとスローロリスを混ぜたような生き物が

縮んだり 伸びたりして

父と私を迎える

全員が全員 手を足を取り合って

キレイな浜辺を堤防のようにして列になる

父は低画質のテレビの表面のように

ブルブルと歪んでいる

私は 引き攣った笑いをしながら

キレイは浜辺を歩く


いくらか歩いていると

列の途切れた部分がある

少し先には 大きなトンネルがガボーっと開いており

その暗闇に圧倒される

トンネルは 細く伸びたツルやしなびたコケが散乱していた

ズシズシと歩く音が聞こえてくる

逃げたくても足が動かない

父は 私の手を取って 動かない

私と同じように 引き攣った笑いをしていた


姿が見えた 緑色の大きなトカゲだ

私たちを丸呑みにできるぐらいに大きい

するとトカゲは父を丸呑みにしてしまった

ゴクっと美味しそうに喉を鳴らして食べてしまった

私は何もできなかった

突然 トカゲは私にこう言った


「信号機を刺せ」


私は浜辺の奥の奥にある 巨大な信号機を目指して

歩みを進めた


<シークレット・ボーイ>


スーパーマーケット

割引シールを漁るもの

何かに追われているような面持ち

店内の客は皆知らんぷり

私を見ようとしない


<酒の席>


酒の席

大勢で呑む

人気芸人の群れ

私は一発ギャグを強行された


「おーまえの かあちゃん の でーべそ ぼくがたべちゃったー」


雰囲気は最悪で 静まりかえっていた


<錯乱館>


横幅約一メートル

行く先は 真っ暗

まるで深海


一歩踏み出せば ボワンと明るくなる


四つの水槽がある 私を囲むようにして とても大きな水槽がある

底のない水槽

しかし上からは しきりにバシャバシャと水が溢れる


水槽の中身は

巨大な身体を見せつけるマンボウ

歯をむき出したデカいサメ

燃えるように赤い大きなタコ

冷めに冷めたクラーケン

人を丸呑みできるチョウチンアンコウ

何もない水槽


いつ ひび割れても おかしくない

ずっとオートに ゆっくり歩いている私

止まることはない

ヒタヒタと歩みを止めない

ガタガタと震えながら

延々と出口を目指している

出口なんてないのに


<歯>


鏡の前に立ち

腹が鳴る お腹が空いた

崩れ落ちる口の中の歯を

ボリボリと食べた

死肉の味がした


<瑞々しい痛み>


何かに狙われている

三人に追われている

ロッカーに隠れる

しかし ロッカーの奥行が浅い

隠れられない

オレンジ色の溶けたバットを私に振りかざし

そのまま

バシャーンと叩きつける

冬のバケツの水をかけられたときのような

鈍くも冷たい

瑞々しい痛みが顔に・・・


<幼少の夢>


ピンと張った

細い糸

真っ白な立体的実験空間

その糸に のっかる

粘土のような柔らかくて重い物体

落ちそうで落ちない

裂かれそうで裂かれない

寄れかかった重みと食い込んだ気持ち悪さが

現実の私にそのまま伝わる

汗はダラダラと垂れて

呼吸は荒くなる

動悸が激しくなるばかり


<階段>


教室に入らなくては・・・


遅刻してはいけないんだ


早く行かなくてはならないんだ


この肩に担いだパイプ椅子を


どうにかして あの 自分のいるクラスに


置いていかなくてはならないんだ


「おい 遅いぞ! いつまで運んでるんだ!」


担任の 毛むくじゃらが 呼んでいる


うるさいな


その腕から伸びた毛が 足にからまるんだよ


この磯辺揚げされた階段が


美味しそうでなくなってしまうんだよ


ああ いつになったら


この椅子を 置くことができるんだ




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

雑多な夢 @Hashiya-Kare

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ