ずっと味方

「私、みーちゃんの所に行ってくる」


「え? みーちゃんって、まさか……」




 娘の言葉を最初私は聞き間違えか何かかと思った。




「うん」




 だが、力強く頷く娘を見て、その言葉に偽りはないようだった。




「何の為に?」


「ちゃんと、出てきてほしいんだ。それが友達の私にできることだから」




 信じらない、というのが正直な気持ちだった。


 自分が何を言っているのか分かっているのか。止めるべきなんじゃないかと思った。




「ダメよ」




 そう咄嗟に口にしようとした私の言葉は、すんでの所で押しとどまった。




 ――それでいいのか。




 娘の決心を、想いを理解せずに、そんな簡単な言葉ではねのけてしまっていいのか。


 辛い時期をお互い歩いてきた。娘の全てを見てきた、と言いたい所だがそこまで娘の事を見れていたかと言われれば自信はない。でも、可愛い一人娘だ。常に味方であり、支えでありたいと思って生きてきた。


 だからこそ心配でならなかった。今更なぜそんな事をするのか。本当に必要な事なのか。それに、そもそも意味などあるのか。


 いろいろな思考が頭を一気に縦横する。考えれば考えるほどわからなくなる。何が正しくて、何が良くて、何が間違っていて、何が悪いのか。




「お母さん?」




 娘の声ではっとなる。目の前に心配そうにのぞき込むつぶらな瞳がある。可愛い娘の顔がある。


 途端、全ての思考がくだらなくなる。


 どれだけ辛かっただろう。どれだけ苦しかっただろう。それでも頑張ってきた。




『辛くても、それでも私は友達だから』




 娘の言葉を思い出す。だからこそ、私は娘の味方でいれた。味方でいなければと思った。あの時と同じように、私はちゃんと娘と向き合いたい。向き合わなければ。


 思い出せ。あの時も私は、ちゃんと味方でいてあげられた。夫は理解出来ずに去ってしまったけど、私はずっとこの子の味方でいると、そう決めたではないか。娘は間違っていない。何一つ間違ってなどいない。


 それに。


 だってもう、この子の味方は、私しかいない。




「分かった」




 だったら、この子の背中は私が押してあげる。私は、ずっとあなたの味方。

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