鬼と手紙

“ありがとう。本当に感謝しています。でも、後もう少しだけわがままを聞いてほしいです”




 手紙がまた届いていた。


 あなたの為にここまで頑張ってこれた。あなたのわがままならいくらでも聞いてあげる。そう思いながら色々な事を振り返っていた。




“僕のお願いを聞いてほしいんです”




 最初は質の悪いイタズラだと思った。だがそこに書かれた名前を見た時、私は思わず心臓が止まりそうになった。


 イタズラなのかもしれない。だとしても、これはただのイタズラではない。




 ――この手紙を無視してはいけない。




 それから全てが始まった。そして確信した。


 本当に、彼なのだと。


 これはきっと私の為に用意されたやり直しなのだ。


 あの時救えなかった過ちの贖罪の為の。


 ならば、無視などしていいはずもない。

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