三章 常識外

鬼と贄

「何して遊ぶ?」


「こおりやろうぜ!」


「さんせー!」




 いつものメンバー。いつもの遊び。


 その中でも、特に“こおり”は好きだった。最近はもっぱら”こおり”だ。


 だが、いつも同じ事の繰り返しではすぐに飽きてしまう。だから今日の“こおり”は少し違う。




 俺はちらっと後ろを見る。とぼとぼと情けなく歩くあいつの姿がある。駄目だ。想像しただけでにやけてしまう。




「じゃあ、鬼決めようぜ」




 みんな分かっている。今日何が起こるか。たった一人を除いて。




「じゃーんけーん」




 一斉にみんなの手が前に出る。




「あー俺かー」




 鬼はえいちゃんに決まった。


 誰でもいい。鬼があいつにならなければそれでいい。もしジャンケンの結果あいつが鬼になったとしても、難癖つけてやり直せばいい。全てもう決まっている事なのだ。




「よーし始めるぞー!」




 えいちゃんが俺らに背を向け、数を数え始めた。




「いーち。にー。さーん」




 カウントが十になれば、鬼のえいちゃんが俺達を追ってくる。それまでに出来るだけ皆えいちゃんと距離をとる。




「しのぶ、しくじんなよ」




 一緒に横を走っていたカネが悪い笑顔を浮かべながら言った。




「分かってるよ」




 同じように俺は笑顔を向けた。




「しー。ごー。ろーく。しーち」




 カウントが近づく。




「はーち。きゅーう」




 こおりが始まる。触れたものを凍り漬けにする、コオリオニ。


 鬼に触れられたものは、その場から動けなくなる。


 仲間が助けてくれるまで、ずっと。ずっと。




「じゅー!」

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