プロテスタントの妻



 1829年12月29日 カール大公の妃、ヘンリエッテが亡くなった。

 猩紅熱しょうこうねつだった。子どもの看病をしていて、罹患したという。


 彼女を、カプチーナ礼拝堂(ハプスブルク家代々の墓所)に葬るには、異論が出た。

 ヘンリエッテは、プロテスタントだったからだ。

 クリスマスに、ツリーの蝋燭に火を灯すという習慣をオーストリアに持ち込んだのは、彼女だ。


 カール大公妃ヘンリエッテは、ハプスブルク家が始めて迎えた、プロテスタントの配偶者だった。


 ウィーンの宗教的な寛容特別地域には、彼女の為に、プロテスタントの祈祷館が造られていた。だがこれは、彼女の死により、取り壊された。




 「生きていた時に我々と一緒にいた者は、死して後も、一緒にいるものだ」

 皇帝はそう言って、この義妹ヘンリエッテを、カプチーナ礼拝堂に葬ることを許した。











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る