二章
旅程①
〈
神話によるところ、ウルスス連王国建国の初代双王オーベリオン、ティターニアと戦い、その最中、返り血に酔った〈
神話にはいくつかのパターンがあるが、大筋は変わらず、時代の終わりに英雄として現れ、やがて暴走し、敵対する役回り。
〈
「……彼がヴァン・グラム侯のご子息? 本当に
「春の儀式で〈
「どうせまた、あのヴァン・グラム侯の仕業でしょう。一緒にいる
「でも、三人とも顔は好みだな」
「ええぇ……リドリィ隊長……」
同行している
気を利かせてボク達は少し離れたところに天幕を張っているが、平原の中とあっては、彼女らの囁き声は晩餐会の会場よりもよく聞こえる。
「わたし、ちょっと殴って来ましょうか」
「返り討ちにされるからやめなさいって、シエロ」
青筋立て、肩を回しながら立ち上がろうとするシエロを押しとどめる。
礼儀作法はボクなどよりよほど心得ている筈なのに、ボクやヴァン家のこととなると男女の別なく容赦がない。
「しかも、従者付きで
「彼女ら妖精騎士団は、
憮然としたシエロに、ハウワッハ教授が講義のような口調で諭した。
「それは存じていますけども」
「お陰でボクたちも馬を借りられたんだ、良しとしようよシエロ」
彼女らが救出の任務を受けているため、道を急いでいることもあるが、こちらの馬まで用意してくれたのはありがたい事だった。
「そうですよシエロ様。お陰でオイラも村に帰れるんスから」
ジャガイモと干し肉のシチューをキャンプ用のマグカップによそいながら、一緒にいた
少年と言っても、
「しかし、ロロミト少年は良く村への道案内を買って出る気になったものですね。一緒に来たもう一人の方は、
「『氷河の迷宮』でアレを見ちまったら、ああもなるっスよ……」
「
「ああ。そりゃあ、おぞましい光景だったっス」
思い出して寒気がしたのか、身震いしたロロミトは熱いシチューを一気に啜った。
「なぜ、ロロミトさんは村へ帰る気に?」
「母の具合が悪いんで街で買った薬を届けるついでっス」
「
「怖いっスけど、アレが村に来たらひとたまりもないっス。それに妖精騎士の方々の道案内で褒美も貰えるんで」
「強いんだね」
そう褒めるとロロミトは少し照れた後、
「そうっスかね……オイラには、どうにもサリオン様の方が、よっぽど強い……恐ろしいものに見えるっスよ……」
そう彼はシエロやハウワッハに聞こえない様、小さく囁いた。
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