どこにもない声

かわら なお

 

ふと君と目が合う

君は笑って空に身を投げた

思わず伸ばした手は届かなくて

鈍い音が僕を閉じ込めた


あの日から何日か

僕は今もこの部屋で

布団に包まり温もりを求めて君を待ってる

ふとした瞬間に君が帰ってくるんじゃないか

そんな期待にドアを見る

今日もドアは開かない


あの日から君は笑わない

声も泣き顔も怒って拗ねてるあの姿も

跡形もない

何もない

記憶の君は笑って泣いて怒ってるのに

声が顔が ぼやけていく

もうこれ以上忘れたくない

君をなくしたくない


大好きだったから

気付かなかった

君を幸せにしたかったのに

世界一幸せだと言わせたかったのに

君がしんどい時にそばにいれなくて

苦しい時に気づいてあげられなくて

泣いてる時に僕は君をみてあげられなかった

どうして幸せにしたかったのに

君にただ幸せだと言わせたかったのに

君はもういないんだろう

どれだけ頑張れば安心させられるかな

君が僕を頼ってくれるかな

信じてくれるかな

僕を見てくれるかな


君が生きていく理由に僕がなれなかったことが悲しい

君が僕に死にたいと言ってくれなかったことが悲しい

君がしんどい時にそばにいれなかったことが悔しい

苦しい時に気づけなかった無力な自分が悔しい

泣いてる君を見てあげられなかった自分に腹が立つ


君が生きていく理由に僕はなれなかった

でも僕はもうすぐそっちにいくからね

全て終わったら君を迎えにいくから待ってて

もう少しだから


僕が死んだら君は喜ぶかな

悲しい顔をするかな

困った顔で笑うかな

君を守れなかったこと許してくれるかな

僕が死んだこと許してくれるかな


ねぇ君を待ってるよ

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どこにもない声 かわら なお @21115

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