第22話 狙われた犯罪
「こんなに近いんだったら、
今度鍋パーティーでもしようよ!
サムはお鍋食べたことある?!」
そう陽向に尋ねられ、
「はい! 僕、お鍋大好きです!
是非やりましょう!」
と答えた。
「サムはどんなお鍋が好き?!
和風……洋風……中華風……
色んなのあるよね!
僕はね~ あっさりしたのが好きだから……
やっぱり水炊きをポン酢でかな!
まぁ、僕は大人になるまで水炊きポン酢だけだったから
それが一番なんだけどね!
でも光はピリ辛系が好きなんだよね!
あ、でも、もつ鍋なんかも好きだよね~
佐々木君はこってり系だけど!
だから僕達、どんなのも来いだよ!」
そんな風に、僕たちはワイワイとしながらエレベーターで登って行った。
「へ〜 ここはエレベーターからの眺めもすごく良いな」
仁が言った。
確かにここはエレベーターがマンションの外壁に設置されているので、
夜なんかは夜景が綺麗だ。
「ねえ、家族が増えるとコテージも手狭になるから、
その時はこんな所に引っ越そうよ~
何だかエレベーター使う度にこの夜景ってロマンチック~
4寝室の家族部屋、空いてないの~」
そう言っていたのは陽向で、
「お前さ、住めば慣れてしまって、何とも思わなくなるぞ?
こういう所は偶に訪れてこそ良いんだよ。
それにお前、家庭菜園するの好きだろ?
ガーデンは欲しくないのか?
コテージを建て替えた方が良いと思うが?」
と答えていたのは光だった。
そうこうしているうちに、
僕の済む階に着いてエレベーターが開いた。
「この階だよ。
その角を曲がったところが僕の部屋だよ」
皆んなを案内してドアに手をかけた途端ドキンとして動けなくなった。
「どうしたんだ?
鍵がないのか?」
そう尋ねた仁に、
「キーコードが無効化されてる……
ドアにロックが掛かって……無い……」
震えながらそう呟いた。
仁は光と顔を見合わせると、
僕を後ろに回し、
「陽向と少し離れているように」
そう言って携帯で電話を始めた。
僕は唯ボーゼンと彼等の事を人事のように見ていた。
暫くすると、警察官が二人組でやってきた。
さっきの電話は警察への電話だったのだろう。
警察官の後に付いて中に入ると、
中は竜巻が通ったようにグチャグチャだった。
「うそ……」
「ウワッ、これはひどいですね~」
一人の警察官が他人事のようにそう言った。
「ざっと見回して無くなっているものは有りませんか?
これだけ荒らされていると難しいかもしれませんが……
あっ、くれぐれも、物には触らないで下さいね」
そう言われ、ハッとして玄関まで戻った。
「うそ! うそ! 写真がない!
ジュンの写真が……
此処に飾っておいたジュンの写真がなくなってる!」
僕はその場に座り込んだ。
「無くなってるのは写真だけなのか?」
仁が後ろから肩を叩いた。
「分からない……
こんなにグチャグチャだったら、
何が無くなっているのかさえ分からない……」
“でもあの写真だけは……”
僕は頭の中が真っ白になった。
“彼の写真はあれしかない!
もう彼を見つける手段は絶たれたの?!”
僕の頭の中には、
部屋を荒らされたと言う事より、
彼の写真が無くなった事しか頭に無かった。
「お前の部屋だろう?
本当に無くなっているものが分からないのか?!」
仁に責め立てられるように詰め寄られたので、
僕は気を取り直して周りを見回した。
「そうだ、落ち着いて周りを見てみろ。
何か違和感のあるものは無いか?」
仁に耳元で囁かれ僕は次第に落ち着きを取り戻していった。
“仁の声……”
こんな状況なのに、僕は又馬鹿なことを考えていた。
ついさっきまでジュンの事を考えていたのに、
今は仁の声が心地良い。
僕は深呼吸すると、
辺りを見回した。
「僕の……ノートパソコンが無い……
それと……USBが何本か……」
「その調子だ……
良いぞ。
他には無いか?」
仁の励ましに、
僕は立ち上がり荒らされた部屋の中を見回った。
光と陽向はもう一人の警察官と玄関で何かやり取りをしていた。
「恐らく物取りの犯行でしょうね。
今鑑識を呼びましたから、
この手袋をはめて下さい」
そう言われて手袋をはめると、
僕は床に散らばった物をかき集め始めた。
「通帳が無い……
パスポートも……
アメリカの運転免許書なども無くなってる……」
それを言った時、
「は? それ、おかしく無いか?
通帳や金に変えれるパソコンなんかはわかるとして、
アメリカのパスポートや運転免許?
そんな金にならないような物、
只の物取りには関係ないだろ?
裏組織の偽造売買とかなら話も分かるが……
偶然に通帳と束になってたのを持っていったのか?
それにこの荒らされよう……
只の物取りと言うよりは、完全に
“何か”
を探していたって言った方がしっくりくるよな。
それにここはセキュリティーのしかっりしたマンションだぞ?
それもこんな高層階の……
鍵の壊され方も玄人みたいだし、
これ、完全にお前を狙ってやった犯罪だよな?」
そう言って仁が手袋をはめてそこらへんを引っ掻き回し始めた。
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