神界から派遣されたチートの回収者

アニッキーブラッザー

第1話

「バカな! Fランクの最低テイマーが、何でドラゴンを操れるんだよ!」


 あっ……わぁ、やってるなぁ……


「俺をパーティーから追放したお前たちに教える義理はない。お前たちが知らなかっただけだ……本当の俺を」


 巨大生物の背に乗る人間の青年。

 それを恐怖で怯えた表情で見上げる人間たち。

 うん、青年くん。ごめんね。それ、本当は君の力じゃなくて、気まぐれで与えられた力なんです。

 神界の『前・創造神さま』がテキトーに与えた力なんです。


 

「エンシェントドラゴン、力を貸して欲しい。こいつらは殺さなくていい。でも、後悔を刻み込んでやりたい」


「グルアアアアアアアアア!」



 えっと、あの人間が乗ってるのはドラゴンですね。

 とりあえずあのドラゴンをこの世界の生物百科事典でサーチすると……


「ま、待ってくれ、俺……」

「ね、ねえ、あのとき私たちはあなたを追放するの反対したのよ! でも、リーダーが勝手に! ねえ、私たち、幼馴染でしょ? 信じて!」


 あらら、恐怖に怯えて彼らは泣いて…… 



「ふざけるな。今さら手の平を返してるんじゃない。リーダーも、そして俺をゴミのような扱いしたビッチも、思い知らせてやる! 俺の真の力で!」


「「ッッ!!??」」



 だからね、君の真の力ではないんです……っと、サーチ完了。


『分かりました、『御主神ごしゅしんさま』。あれはエンシェントドラゴン……この世界の創成期から生息する古龍……分かりやすく言うと、伝説のチョー強いドラゴンです!』


 すると、僕の言葉を聞いた、僕がお仕えする御主神さまは美しい女神の笑みを浮かべられた。



『ほうほう、そんなスゴそーなのを、バカの気まぐれで使役させられるようにしちゃったと。よく調べた、わらわのめんこい『天使・マイン』よ。ほれ、褒美にホッペにチューじゃ』


『ひゃぅ!?』


『ぐふ♡ 初々しい反応をする。あとで死ぬほど抱いてやるぞ~♡』



 うぅ、このお方は僕のお気持ちを知りながらこういうことを……たいへん光栄で嬉しいですから僕も困っちゃうんです。


『それで、あの人間はどうされます?』

『もちろん、『チート回収』じゃ、今すぐに♪』

『え、でも何だか今は過去の仲間っぽいのを見返しているようですし、もう少し待ってあげても……』

『そんなの知らぬ』


 そして、僕はこの方には逆らえない。

 ずっと憧れていたから幸せでもあるんだけど……


『うぅ、わ、分かりました……御心のままに……』


 そして、僕が折れたことにニンマリと笑みを浮かべた僕の御主神さまは、軽く咳ばらいをされて……



――偶然手にした力で世界を見下す愚かなる生物よ……


「え? な、なんだ?」


――過ぎた力は世界の崩壊を招く。貴様の力は回収する。


「え? な、なにを……あれ? なんだ、天から僕に光……うわぁ!?」



 世界にとってバランスの悪いチート……それを今、『回収』された。

 これであの人間の青年は……



「僕は一体……え? エンシェントドラゴン……?」


「……………」

 

「どうしたんだ、エンシェントドラゴン! 僕の、うわ、ちょ、落ちる……うわぁ!?」


「……グル……!」


「一体どうし、え? 何で? どこへ行くの? 待って、待ってくれよ! 僕たちは友達だったじゃないか!」



 どうやら能力無くなったとたん、ドラゴンは態度を変えて行ってしまいましたね。



『まっ、あの使役の能力には一種の魅了や洗脳の力があったのでのう。これでこの世界の仕事はおしまいじゃ♡ さ~て、あとはマインとムフフなお楽しみ……っと、その前に……コホン!』


――悲観するな、人間よ。貴様らが真の友情で結ばれる運命ならば、今度はチートではなく自力で友になれ



 御主神さまは、ちゃんと神のメッセージを残される。

 本当はこういうのダメなんですけどね……

 


「な、なにが……」


「は、はは……な、なんだ、ドラゴン行っちまったぞ! ビビらせやがって!」


「え……!?」


「この野郎! ビビらせやがって! おらぁ、もういっぺんさっきみたいにイキがってみろ!」


「ぐへ!? そ、そんな、なんで!? 俺は選ばれた存在じゃなかっ、ぐへええ!?」



 さて、とりあえず人間の君、あとは頑張ってくださいね。



――あとがき――

お世話になります。全6話。カクヨムコンの短編賞に参加します。「面白い」、「続きが気になる」、「連載しろ」など思っていただけたらフォローや下記の「★」でご評価お願い申し上げます。

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