遊びのうえ

赤井飛猿

第1話 遊びのうえ

目を醒ます。

美味い酒に美味い飯。

気心しれた悪友との久々の豪遊。

金にものを言わせたのは大人気ないからちょいとばかり反省はする。


店主が目覚めた事を確認して水を運んでくる。

言葉では言わぬが、迷惑を訴えているのは白日。


この日の営業準備に忙しない様子。

昨晩の豪遊代の半分以上は払われていない。

突然の物入りで自分が誘った遊び。

朝を迎えて昼まで眠ったために、居残り代金が上乗せされている。

酩酊直後の状態では考えるのは鬱陶。


女が障子の隙間から口を袖で隠して笑っている。

何がおかしい。


「ごめんなし。覚えていないでやんすか?

 あんたがうどん、わちきがそばをたべたでやんす」

 「あん?お前がたぬき、俺がきつねを食うた気がする」

 「たいへん美味しいござりんした。

あんさん、今から帰るのもどうだから、今夜も遊んでいらっしゃい。今度はわきちがそば、あんたがうどんを食べるでやんす」

「なんでえ、そんなこと。言うてえ、こちとらお足がたらねえや」

「あら、お連れさんがあんさんを迎えに来るでやんす」

「なに?俺を?本当か?」

「あいあい。楽しかったから、迎えに来てまた遊ぶとか」

「ほう。あいつらも遊びがわかってきたな。働くときは真面目に働いて、ここぞとなればハメを外して遊ぶ事が出来るようになったか。そうと決まれば花魁、腹が減った。さっそく飲んで食うぞ」


  

キツネとタヌキも敵わぬ、食えぬ「尾いらん」にはまるのは御注意を

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遊びのうえ 赤井飛猿 @akaitobizaru

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