第3話 想い

年月が過ぎてアクスは十五歳、セティアは十四歳になっていた

戦争はまだ続いていた

いつも二人で過ごした花畑、アクスはこの場所が大好きだった 

隣にいつも居てくれた花のように明るい笑顔のセティア

その日も二人で花畑を散歩する

「よく二人でかくれんぼしたっけね」

セティアが懐かしそうに呟いて微笑む

花畑をゆっくりと見つめながら、深い深い深呼吸をする

もうすぐこの土地から離れて、戦場へ行かなければならないかも知れない

アクスのいつもとは違うなにやら悩ましげな表情に心配そうに首を傾げながらセティアが問う

「どうしたの?アクス」

アクスは、そっとセティアを見つめる

まだあどけないセティアの笑顔、ブルーのパッチリとした大きな瞳がキラキラしながらアクスを見つめる

コハク色の肩まで伸びたサラサラの髪が風に吹かれ静かに揺れる

ふいに胸が苦しくなった

今、目の前にいる少女が愛しくて愛しくてたまらない

本当はこのままどこか違う世界に連れて行ってしまいたいくらい

アクスの心の中にセティアに対するそんな感情が芽生えていた


十五歳の誕生日にアクスは国から土地をもらった

自由に使って良い、アクスの土地だ

アクスはその土地を一生懸命耕していた

その姿をセティアはいつも不思議そうに眺めていた

アクスはこの土地に何をするつもりなんだろう?

汗を流して夢中で土地を耕すアクスはなぜか幸せそうで、その姿をセティアも幸せな気持ちで見つめていた

アクスはいつの間にか大きくなった

昔は同じ位だった背丈もセティアより頭一個分は大きくなった

程よく筋肉のついた腕、力を入れると血管が浮き出る手、、、逞しくなった

この間は、体調を崩して倒れたセティアを軽々と抱き抱え、ベッドまで運んでくれた

セティアの中にもアクスに対する何だかよくわからない感情が芽生えていた

それは、父を想う気持ちとも、母を想う気持ちともなんだか違う、そんな気持ちだった

ただ、アクスを見ているだけでとでも暖かい気持ちになるのだった

「何をしているの?アクス、何ができるの?」

アクスの側でずっと見守っていたセティアだけれど、何だ聞いちゃ行けないような気がして躊躇っていたけれど、ついに耐えきれなくなってアクスに尋ねる

アクスがセティアの方を振り返り、手を止めてしばらく考えた後、やっと口を開く

「花畑を作るんだ」

せっかくもらった土地に花を植える程、アクスは花が好きだっただろうかと疑問に思いながら再び尋ねた

「花?どんな話が咲くの?」

「セティアの、、、笑顔みたいな花だよ、来年の今頃は、一面その花でいっぱいにするから」

ニッコリと、まだ幼さの残るちょっとはにかんだ笑顔でアクスは笑う

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