2 いざ出陣

 「本当にお昼食べなくていいんですか。カップ麺ならすぐ出来ますよ」

 「いらない。今日はサウナと温泉に浸かったあとアルコール飲み放題なんだ。おまけに夜鳴きそばがつく。それに明日の朝はバイキングだから」


 「次の日の朝食のために前の日から備える人も珍しいと思うけど。私は緑のたぬきいただくわよ」

 「駅に着いたら、コンビニでお酒のお供を買うよ。すこし早く家を出るから遅れないように」


 北浜駅に着いたのが2時丁度。都合よくスーパーがあったので、唐揚げとお刺身、フライドポテト、妻にはクッキーとチョコを買ってホテルに向かう。


 ところが、なかなかお目当てのホテルが見つからず、後ろを歩く妻のご機嫌が悪くなってくる。


 「だれかに訪ねたら」

 「いちど駅に戻ったら」

 「どうしてホテルまでの道順しらべておかなかったの」

 「お刺身まで買って。いくら冬でも悪くなるわよ」

矢継ぎ早に浴びせられる声にたまりかね


 「ここは私が50年前に勤めていた会社があった所だ。東京に転勤になるまで7、8年はいた。何でも知っている」


 「その時ホテルはあったの?」

 「いや、まだ無かったはずだ」

 「それじゃあ、何も知らないのと同じじゃないの」


 通りがかった宅配の人に訪ねてようやくホテルにたどり着いた。


 そこは私が以前勤めていた会社があった場所であった。


 「ここなら最初からわかっていたのに」

 「あなたらしいわね」


 「早くチェックインを済ませて風呂に入るぞ」





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