第2話 異世界の料理事情のあれやこれや

 ここは中央都市にある小さな道具屋さん。

 暇を持て余す猫人キャットピープルとドワーフ。

 ふたりのおっさんが、どうでもいい事をおしゃべりしています。相も変わらずどうしようもありませんね。


■□■


「なぁ、ロイよ。知っておるか?」


「知らねえ」


「まだ、何も言っておらんだろうが!」


「何だよ、聞いて来たから答えただけだ。で、何だよ」


「ついこの間、そこに出来た飯屋あったろう」


「ああ、あったな。異世界人が始めたって店な。評判は微妙だよな」


「あれな、潰れた」


「ぅお、マジか。早かったなぁ~。でも、評判は、良く無かったもんなぁ。ドゥラスは食った?」


「一回な。ま、普通じゃった」


「でも、あれだ。店主は自信満々だったって話だよな。何でそんなに自信があったんだろう?」


「『固いパンと味の薄いスープしか知らないから、うまいだろう』って、態度をしてたってよ。まったく、そんな訳あるか」


「だよな。何を持って、そんな風に思っていたんだ? こっちにだって美味い物はいくらでもあるってのに」


「何か知らんが、舐め腐っていたんだろうな。潰れて当然じゃ」


「手厳しいな」


「だってよ、西区にある食堂は行ったか? あそこも店主は異世界人じゃぞ」


「え!? そうなんだ。どうりで変わったメニューがあると思った。あそこは美味いよな。あれ? でもさ、あそこ普通の料理も置いているよな」


「ああ。あそこの店主は勉強熱心な人なんじゃ。職人肌なんじゃろうな。美味い物を勉強して、取り入れて、常に新しい物を探している。異世界人じゃなくとも成功しておろう」


「へぇ~。話していたら行きたくなってきたな」


「結局、ダメなヤツはどこで何しようとダメなんじゃ」


「何だか今日は手厳しいな。どうした」


「別に⋯⋯」


「うん? 何だよ、急に元気無くなったじゃねえか」


「⋯⋯朝、カカアにだらしないって死ぬほど怒られちまってよ⋯⋯」


「こえーのか?」


「⋯⋯ぅん」


「声ちっさ! そんで八つ当たりしていたのか。人のダメな所言う前に、まず自分のダメな所を直して行こうか」


「⋯⋯ぅん」


「声ちっさ! 分かった、今日帰りに一杯奢ってやるよ」


「⋯⋯一杯?」


「分かった。二杯奢ってやる」


「二杯ぽっち?」


「分かったよ。奢ってやるから、元気だせ、な」


「⋯⋯ぅん」


「声ちっさ!」

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