生徒会長の憂鬱

バブみ道日丿宮組

お題:壊れかけのあの人 制限時間:15分

生徒会長の憂鬱

 ーーあの人に関わらないほうがいいよ。

 

 学校内で噂される人物は、生徒会長。

 関わらないほうがいいのに、なぜそんなポジションについてるのか。

 生徒会選挙の演説は普通だった。むしろ、あたり前のことしか言ってなかった。

 あるとすれば、他に立候補者が出なかったことが要因にある。誰もやろうとしなかった。立候補者がいる関係上、必然的にその枠は埋まる。

 そうして、生徒会長は生徒会長になった。

 今日もその生徒会長は一人でご飯を食べてる。

 忙しそうなときはどこか別の……おそらく生徒会室で食べてる。それも確認されてるわけじゃないので確かではない。

 生徒会長のスペックは勉強ができる、教師に慕われてるーーそんなことはない。

 平均値。それは見た目もそうで、誰でもありそうでなさそうな人だった。

「放課後17時になると、悲鳴が生徒会室から聞こえるんだって」

 ぱくぱくとパンを頬張ってると、クラスメイトがそんなことを話す。

「それはいつもなの?」

 浮かぶ疑問。

「うん。文化系の部活の人が聞いてるって言ってたよ」

 なるほど。

「それって本人が近くにいるのに、言って大丈夫なこと?」

 視線を生徒会長に向ける。

 聞いてるのか聞こえてないのか、ひたすらに箸を動かしてた。

「別に大丈夫でしょ! 関わらなければいいだけだし」

 十分関わりそうな発言だよなとは口には出さない。

 代わりにぱくぱくとパンを運ぶ。

「生徒会室には生徒会役員以外は入ったことないみたい」

「それは不思議だね。先生とか入りそうなのに」

「鍵は生徒会役員だけがもらえるとかなんとか。だから、先生は入れないみたい」

 いいのか、それは。

 学校の支配者のような教師がそのエリアに入れないことは問題ではないのか。

「問題がある生徒しか、生徒会に入らないって噂もあるよ」

 その可能性はないんじゃないだろうか。

 他の生徒会役員の噂を聞いたことがない。

「仕事してくれてるなら、私はいいかな」

 自ら望んで関わることはないだろう。

「そうも言ってられないよ。部費を決めるのは生徒会だから、あたしたちのテニス部だって予算があるんだよ」

 それもそうだ。

「部長がなんとかするんじゃない?」

「部長が生徒会長と話すのを嫌がってるんだよね。代わりに行ってくれる人を探してるらしい」

 そこまでの恐怖が生徒会長にあるのだろうか。

「……」

 横顔に視線を向ける。

 とてもそんな恐れを感じるような人には見えない。

 だが、生徒会室から聞こえる悲鳴というのが本当であれば、なにをしでかすかわからない人かもしれない。

「ーーどうする? やってみる?」

「えっ、なにが?」

 視線に集中してて、耳に入らなかった。

「意見いう係」

 それは嫌だなと、お互い笑いあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

生徒会長の憂鬱 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る