第26話 星に誓いを
「とりあえず・・・」
先に風呂から上がった沙羅。
少し悩んでから持参したパジャマに着替えるのをやめ、肌の上から
もはや頭の中は非日常でパンパン。
沙羅と入れ違いにバスを使っていた香月のドライヤーの音も今は消え、すっかり静かになった。
自分の心臓の音で落ち着かなくなった沙羅は、ソファテーブルの上に今日の思い出のソラカラちゃんのキーホルダー、コンサートのプログラム、白いバラのブーケを並べて香月を待っていた。
「あれ、沙羅さんどうしたの、きれいに並べちゃって」
同じホテルのバスローブを着た香月が戻ってきた。
ローブの衿元からくっきりとした鎖骨が見えて、沙羅は慌てて手元に目を移した。
「今日一日、楽しかったなって思い返していたの」
「楽しかったよ。でもかなり予定を詰め込んだから沙羅さん疲れたでしょ」
香月は部屋のミニバーからグラスとハーフボトルのシャンパンを持ってきた。
「じゃ、あらためて二人の3ヶ月に乾杯🥂」
ソファに並んで座りグラスを合わせる。
細かな気泡が細いフルートグラスの底から上がっていく。
「おいしい・・・」
「色々あったからね。やっと二人きりになれた」
「────!!───(汗)」
「沙羅さんどうした・・・?んもう〜!私、すごい緊張してますって顔してるよ」
「するわよ、それは・・・だって私、あの、その・・・」
「実はね、俺もすごい緊張してる」
「うっ、うそ」
「本当です。だって・・・ん〜っと言葉がよくないかもだけどさ。俺、はじめて だからさ」
「・・・なっ・・・////・・・」
「沙羅さんにちゃんとしてあげられるかな。辛い思いをさせたくない、幸せでいい気持ちになってくれるかなって」
「今も、、十二分に幸せよ」
香月は眉を下げて頷き、沙羅の頬を手のひらで撫でた。
沙羅も気持ちよさそうに目を閉じている。
細身のきれいな黒猫のようだと香月は頬から耳、そして髪に指を通して撫でた。
「例えばね・・・男そのものの俺を見た沙羅さんがガッカリしたらどうしよう。気持ちが冷めたらどうしよう、とか」
「そんなことあるわけがないわ。私の方こそ・・・・・そればかりが不安で。
陽司くんに嫌われたり呆れられたりするくらいなら、いっそ何もない方が・・・今のままの方がいいのかも、とか」
「お互い相手がどう思っているのかばかりが気になって仕方ないんだね俺たち。でも俺は ──── やっぱり一歩、先に進みたい。あなたと」
そう言うと香月はグラスをテーブルに置いてソファから立ち上がり、驚く沙羅の目の前の床に片膝立ちになった。
目を丸くしている沙羅を見上げながら微笑み、ローブのポケットから出したのはニューヨーク五番街に本店のある有名宝飾店の水色の小箱。
「開けて、沙羅さん」
「陽司くん・・・・・(パコっ)
・・・・あっ、あの、これはまさか」
「俺に
香月は水色のケースからプラチナに小粒のダイヤが流星のように埋め込まれたマリッジリングを沙羅の左手薬指の先からゆっくり差しこんでゆく。
「あなたに会えた幼い日に感謝しています。あなたを生涯大切にします」
真ん中まで差し入れて
「あなたの辛いこと、苦しいことは俺が半分預ります。決して一人で抱えないと約束してください。あなたを支えるのは俺だけでありたい」
最後まで指輪を嵌めて
「沙羅さんを愛しています。
春も夏も秋も冬も、健やかな時も、病める時も」
指輪の上からキスをして明るく笑い、
「同じ性でもいつかきっと一緒になれる。心はいつも夫婦でいよう。
そして、その日が来るまで共に生きてください。俺と長生きしようね」
沙羅の目からポロポロ涙がこぼれて指輪を濡らす。
「沙羅さん、どうして泣いてるの?
俺、今はまだまだの刑事だけど優良株だからさ。10年後を楽しみにしてよ!
?・・・うわっっ、沙羅さんっ!」
次話は「愛 恋色(あい こいいろ)」です。
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