第6話 酷い有様でしょう
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俺は元々、有名な討伐パーティーの一員だった。役割は何となく決められていた。剣術担当もいれば、囮となって敵を翻弄する担当もいた。
もちろん、防御担当もいた。それが俺。敵の攻撃を防ぎ、その間に他のメンバーが敵に攻撃を加える。連携が上手く取れていたからこそ、俺たちは生き残ることができた。
それなのに、俺だけが突然クビになった。理由は「一人前だから、パーティーに必要なのは五人前から」とか、少し納得できない理由。追放されてから俺は、彼らと出会っていない。まぁ、俺が避けているってのもある。
それが彼らは討伐活動をしていないのか、新聞にすら載らなくなっていた。俺が辞めたから? 違うな、彼らの意思で俺は辞めさせられた側だ。俺1人が辞めたからと言って、組織が回らなくなるなんて、そんなことは有り得ない。だから別の理由があるとは思うが……よく分からない。
長く語ったが、クビになった俺でも人並みの戦闘はできる。追放されてからもゴブリン2体は討伐したし、独りでも何とかなった。いくら防御担当とはいえども基本的な訓練は積んできているから。
それに戦闘というのは突然起こる。突然モンスターが出没して、襲ってくる。咄嗟の判断で、人が死ぬか生きるかが決まる。だからモンスターが現れそうなら、気配を感じ取って動いていかなきゃいけないのだ。
それで俺は気配を感じ取る力を鍛えた。防御担当が倒されれば話にならないから。
それなのに……俺は背後にいる人に気づけなかった。何者かに肩を叩かれたのだ。
急いで振り向くと、後ろには俺よりも背の高い、老いた男性が怖い顔で立っていた。一概に怖い顔と言っても……理解ができないかもしれないが、彼は俺に対して厳しい口調で話しかけた。
「旅人か、用が無いなら帰れ。剣なんて物騒な物持ち歩くな」
俺に対して怒っているのは、口調とその怖い顔から簡単に読み取ることができた。「依頼を受けたからここに来た」と説明しようともしたが、彼がまた話し始めた。
「二度は言わんぞ銀髪頭、帰れ」
今度は俺の前の立ち、そう言った。
あまりの鬼のような形相に場から逃げ出しそうにもなったが、俺は堪えて耐えた。
「おじいさん、その人は依頼されてここにいらしたの。私たちの村を立て直してくれるそうよ」
どうにか彼女が代わりに説明してくれたため、彼は納得したのか、後ろに下がって行った。よく覗くと、後ろにもまだ何人かの村人がいるみたいだったが、今接触するのは……やめよう。まずは話さないと。
先程の家とは違った家に連れて行かれた。そこは窓が破れ床も草が茂っていたりと、普通の家とは言えなかったが、天井が残っているため軽い雨なら凌げそうだ。ガタガタだが机も椅子も使える。
ブラブラと揺れる不思議な椅子に座り、出されたお茶を飲み干した後、彼女の話を聞いた。
「私はティナ・ルトラーマ、村長の孫です。先程は大変失礼いたしました。祖父で村長のトリガ・ルトラーマです」
やはり彼女は……ティナだった。改めて顔を見ると、何でも屋の店主が知っているのも納得だ。ここまで可愛らしい人は見たことがない。少し言い過ぎかもしれないけど。
それは置いておこう。彼女は話を進めた。
「祖父は外部からの干渉を全て断ってきました。『全て俺たちがやる』と言って、都市からの保護も断りました。ポリスタットはモンスターの出没が結構見られる地域なのに、祖父は断り続けました。その結果がこれです」
彼女は立ち上がり、床に生えていた草を触った。
「酷い有様でしょう。ウェール村から立ち退く人が増え、更に状況は悪化していきました。私が説得してやっと保護要請を出しましたが、今更……って感じですよね。行政からも見放され、何でも屋に依頼しましたが、返事は帰ってこず。ずっと待っていました」
どうして外部からの干渉を嫌うのかがよく分からない。言い方は悪いが、自業自得としか思えない。何でも屋は元から営業をしていないような場所だから、そこに依頼してしまったのも間違いだったかもしれない。
「何のご縁か分かりませんが、こうして巡り会えました、村を立て直して下さる方に。無理にとは言いません。でも、お願いします。私たちの村を救ってください!」
彼女にお願いされたなら仕方ない。元から村を立て直すようお願いされていたし、元から立て直すつもりだったし。
但し彼、村長の行動の意味がまだ理解できていない。モンスターに畑を荒らされることが分かっていながらも、保護を断り続けた。これだけは本人に聞いてみたいが……難しそうだな。
話を聞いていて分かったことがある。
どうやらこの村で正式に「村人」となっているのは、ティナと村長だけらしい。他にも数人が暮らしているが、彼らは元々は家もない人間たち。それらを村長たちはこの村に泊めた。それがいつの間にか暮らしていた……らしい。
外部からの干渉を断り続けるが、家のない人たちを泊めることは許すのか。治安のことを考えると、無宿人を泊める方が危険な時だってあるのに。
「すみません、近くには宿泊所が無いので、今日はここでお休みになってください。詳しい話はまた明日、よろしくお願いします」
話を続けようとしたが、夜も遅いし明かりもないため、もう寝ることにした。毛布代わりに小さな布を貰ったが、俺の身体は半分以上出てしまった。寒さを凌げるかは微妙だが、あるだけ良い。
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