【祝3万PV突破!】パーティーから追放された青年は、世界を救う。

新進真【特撮大好き】

第1章『追放』

第1話 追放された青年

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「マイト、お前は今日限りでクビだ」


 モンスターの討伐パーティーのリーダーである赤髪の青年”ガル”が、俺の前でそう言った。

 俺はもちろん耳を疑った、どうしてクビになるんだ? 俺は何かしてしまったか? パーティーの規約を犯すような、危険なことも何もしていないはず。


 一旦、過去を振り返ってみる。


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 俺たちは巷では有名な討伐パーティーとして活動していた。世にはモンスターという、それはそれは人間を襲う害悪な存在が蔓延っており、対処しようにも、一般人の力ではやられてしまう。


 そこで都市の人間はパーティーと称した、言わばモンスターを討伐するためのグループを若者たちに作成させた。


 俺自身、パーティーに入るつもりは無かったが、幼馴染でありパーティーのメンバーである”ソール”に勧誘され、俺も入ることにした。


 モンスターを討伐すればするほど、都市からは給料が支払われる。仕事としてモンスターを討伐することになった俺たちは訓練を受けた。

 討伐訓練所では、俺たち5人が最も優秀なパーティーであったため、訓練所を退所してからすぐに都市からの依頼が大量に舞い込んだ。俺たちは日々モンスターを討伐して、仕事として金を受け取れるようになった。


 更にモンスターを討伐し続けた結果、他の都市の人間に知られ、上級モンスターも倒せるようになった。また、有名なパーティーとして巷に知られるようにもなった。


 街を歩けば「ガルさーん!」と手を振る少女がいたり、都市に赴けば「サタナちゃんは元気かね」とメンバーを気にかける声もあったりと、非常に人気らしい。ちなみに俺の人気はそこまで無い。


 パーティーは5人組。俺、ガル、サタナ、フィン、ソール。全員同い歳だから、とても仲が良い。ソールは俺の幼馴染で剣術を得意とする。サタナは唯一の女性メンバーながらも戦闘面では俺よりも活躍している。フィンはあまり話したことは無いが、とある錬金術師の末裔らしい。錬金術といっても、現在使えるわけではない。あくまでも、昔の話。


 ガルは……俺のことをクビにすると言った人。一応パーティーのリーダーとして、俺達をまとめてきた。俺をクビにする権限はあるにはあるが、理由を教えてもらわなきゃいけない。俺だって黙ってクビにされる訳にはいかない。仕事がなきゃ、金が貰えないから。


「お前の剣術は一人前。褒め言葉に聞こえるが、一人前じゃダメだ、このパーティーに要るのは、せめて五人前になってからだ。それと、先日の”ムスル戦”を覚えているか?」


 ムスルとは炎に巻かれた巨人で、上級モンスターのこと。別の都市付近で暴れていたため、俺たちのパーティーと他4パーティーが派遣された。最初は優勢だったものの、他パーティーが炎に巻き込まれた所から戦況が一変した。


 何とか勝利したものの、犠牲者を大量に生み出してしまった。付近の家は炎の中で消え、他パーティーの中には、仲間を失ったショックから戦意喪失し自殺を試みる者まで現れた。


「お前は前回の戦いで活躍したか?」


 活躍した……とは言えないが、それでも皆のサポートには徹した。剣術を得意とするソールの横でムスルの攻撃を防いだり、何ならガルを庇って攻撃を受けたりと、役に立つことはしてきたはず。


「これだからダメなんだ。お前は守ってばかりで、攻撃していない。何がサポートだ?剣を持たない者は去れ、もうお前は必要ない」


 彼に言われた通り、俺はサポートに徹し過ぎた。4人が上手く攻撃に回れるようにと。しかしそれも無駄だったのかもしれない。俺は頑張ってきたつもりだったが。


「辞めるよ。俺」


 俺はポロッと口に出した。追放される理由が分からないでいたが、振り返ったり実際に言われてみれば、後から理由が見つかってくる。その理由も若干理不尽なものであるが。サポートに徹しなきゃ、君らが死んでいた可能性だってあるのに。でも、クビになるなら自分から----


「その言葉は発するな!」


 酒場の裏倉庫、お世話になっている酒場の主人から借りたパーティーの拠点で、ガルの怒りの混じった声が響き渡る。


「ともかく、お前は必要ない。もうどこかへ行ってしまえ。俺たちがお前を必要になることなんて無い。あるとしても……」


 彼は言葉を詰まらせた後、言い直した。


「お前を今日付けで、パーティーから追放する」


 俺は言葉通り、パーティーをクビになった。酒場の裏倉庫で、静寂という静寂が響き渡る。


 仕方ない、もうここでは必要とされていないみたいだ。若干理不尽なものであるが、追放されたなら仕方ない。


「最後に言わせてほしい、ソールはどこだ?」と俺は彼に尋ねた。


 言ってもガルと俺以外、倉庫には誰もいない。その上、ここ最近俺はガル以外を見かけたことがない。ソールもフィンもサタナも。


「ソールかサタナのどっちかは忘れたが『役立たずの顔なんか見たくない』と言って、どこかへ行ったな」


 俺は正真正銘、嫌われていたのか。役立たず、そこまで言うか。幼馴染で、今まで同じ道を切磋琢磨してきた仲間だと思っていたのに。


 いや、疑うことになるが、ガルが嘘をついている可能性だってある。ソールが俺をそんなボロボロに蔑むことがあるか、いやない。あいつは優しい人間だっ----


「とにかく、お前はもう知らない人だ。パーティーから追放された身として、とっとと都市から”追放支援金”でも貰ってこい。じゃあな、お前と二度と会うことは無いがな」


 追放支援金、パーティーから追放された人間が都市から貰える少額の金。自身の都合で退職するのとは違い、パーティーの都合で勝手に辞めさせられるため、都市がこうやって補償する。代わりに追放したパーティーには軽い罰金が課されるはずだが、課されてもいい程俺が必要無かったってことか。


 俺はガルに押し出されるようにして、裏倉庫から出た。剣や盾といった装備品を返そうか迷ったが、彼ともう一度話す気力は残されていなかった。


 もう彼らは、俺とは違うステージに立っているようで、いつの間にか置いていかれてたみたいだった。今更何を言っても変わることはない。


 ただ、若干理不尽である。違うステージに立つのはいいが、俺に少しくらい連絡してもいいのに。俺は元から必要なかったのか。そう考えると果てしない自己嫌悪感と、パーティーに対する微量の厭悪感に、俺は悩まされることとなった。


 都市に赴き、追放支援金を受け取り、一息ついた。これからどうしようか。行く宛てもない、とりあえず今までお世話になっていた酒場の店主の元へ、挨拶に行くことにしよう。


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