何やってんだ
今回の使用単語
「ひびき。はんけん。たどく」
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外国語の習得には多読――つまりは本を沢山読むことが効果的らしい。分からない単語に出くわす度に辞書を片手に調べるのではなく、なんとなくの解釈のまま読み進めていくのがポイントだとか。そうしていくうちにだんだんスムーズに読み解けるようになっていくのだろうか。半信半疑のまま、俺は一冊目の本を開いた。
基礎だけは付け焼き刃ながら叩き込んでいたから簡単な単語なら分かるが、一方で全く見当もつかない単語もある。……私は……どこに行ったんだ……? だが、次の分でどうやら楽しかったらしきことが書いてあるから楽しい場所なんだろう。
俺は韓国語を学んでいる。隣のクラスに来た韓国からの留学生に一目惚れして、なんとしてでもコミュニケーションを取りたいと思ったのだ。韓国語は聞いた響きが日本語に似ていたから、きっとすぐに話せるようになると思ってたのに……!
とりあえず一冊、ふわっとだけ内容を把握し読み切った。読むこともままならないなら、話すなんて夢のまた夢なのではないだろうか。気が遠くなりそうになりながら次の本に手をつける。やっぱり、私って奴が何をしているのかはピンとこない。
だが、なんだか楽しくなってきた。モチベーションは彼女と話すという目標だけだったところに、ハン検の存在を知ったのが大きい。ハン検――ハングル能力検定。英検の韓国語バージョン。英検は学校で強制的に受けさせられるから持っていてもあまりカッコよくないが、ハン検は他の誰も受けてないだろうから持っていたらそれだけでカッコいい。学年で一番韓国語ができる奴になれば、彼女と接する大きな機会を得たも同然だ。結局そこに戻ってくるなら、やはりモチベーションは彼女だけなのかもしれない。
授業開始五分前の予鈴が鳴り響く。俺は本を閉じ、ロッカーから教科書を取る為に廊下に出た。
「あ、あの……」
「ん?」
ぎこちない声が背後から聞こえてきた。女子の声。それ以上のことは分からず振り返る。
……ええっ!?
「図書、室……どこに、あるです?」
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愛媛県鬼北町付近だそうです。
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